【幸せを決めるPERMA理論】ウェルビーイングの高め方①~ポジティブ感情編~
幸福論シリーズの続き(診断編)です。
これはポジティブ心理学で有名なマーティン・セリグマン博士が提唱する「幸福度アップに繋がるPERMA理論」を紹介するシリーズで、
幸せな状態を決めるのは次の5つの要素から成り立っているとしています。
【幸せ(ウェルビーイング)を決める5つの要素】
- ポジティブな感情(Positive emotion)
- エンゲージメント(Engagement)
- 人間関係(Relationship)
- 意味や意義(Meaning)
- 達成(Accomplishment)
これら5つの頭文字をとってPERMA(パーマ)と呼びます。
私たちは幸せな状態であるほど、目標達成率や仕事の生産性が高まることがわかっています。
この幸せな状態なことをウェルビーイングといって、この5つの要素が高い人ほど幸せだということですね。
今回は、その5つの要素のうちの1つ「ポジティブ感情(P)」の高め方に移ります。

前回紹介した幸福度診断で、ポジティブ感情(P)が平均7点以下だった人に特に効果的です。
自分に何が足りてないか知っておくと便利なので、まだ受けてない方は診断してみるのをお勧めします。
>>【幸せを決めるPERMA理論】18の質問で分かる幸福度テスト~診断編~
ではこれからポジティブ感情(P)について解説します。
ポジティブ感情(P)

ポジティブというと「何でもプラス思考で考えようぜ!」というイメージがありますが、ここでいうポジティブ感情は、そんな陽キャみたいな話ではありません。
なんでもかんでも良い面だけを見て、それ以外のものは見ないとういのはただの現実逃避です。
ここでいうポジティブ感情というのは、ありのままの状況は受け入れながらも、良い面にも気づくことができることをいいます。
例えば、上司からハラスメントを受けて転職したとします。そのとき、
・自分が上司になった時は、部下に同じような思いはさせないようにしよう!
・当事者意識を持ってハラスメントを受けた人の話を聴けるようになったな。
・メンタルがやられる前に早めに気づいて転職できて良かった!
などと考えたりするような感じです。
ポジティブ感情を高めると、ネガティブな状況でも前向きな要素を見つけることができます。
また、ポジティブ心理学者のバーバラ・フレドリクソン博士らの研究によると、
・幸せな状態(ウェルビーイング)を手に入れる可能性が最も高まるのは、ポジティブ感情とネガティブ感情の比が5対1であるときである。
と述べています。

つまり、ネガティブな状況が1つあったら、それに対するポジティブな感情を5つ見つければ幸せな状態(ウェルビーイング)に持っていくことができるということですね。
ウェルビーイングを手に入れるためには、前向きな要素を見つける力を高める必要があります。
ですが、大半の人がポジティブな状況でもそれに気づくことができません。
8割の人は「金のなる木」に気づけない

多くの人が目の前に起きた幸せに気付かないことがわかる例として、ウェスタン・ワシントン大学が学生たちを対象に行った研究があります。
研究チームは、以下の手順で実験を行いました。
①高さ約175センチの木の枝に、1ドル札を3枚挟む
②木の下を通った学生がお札の存在に気付くか調べる
自分と同じくらいの高さの木の下を通るので、よほどよそ見をして歩かない限り、お札は目に入ります。
視界に必ずお札が入った状況で、学生たちが金のなる木に気づけるかを確かめました。
あなたは、どれくらいの学生たちが金のなる木に気づいたと思いますか?
実は、目の前の紙幣に気づいた学生はたったの19%だったのです!
学生が歩きスマホをしていた場合は、さらに6%にまで下がりました。

少なくとも約8割の学生は、目の前にお札があるのを目にしながら、金のなる木をスルーしたのです。
ポジティブ感情(P)を高める方法

先ほどの「金のなる木」の調査からわかるように、幸せな人とそうでない人の違いは、
「どれだけポジティブな出来事が起きたか」
ではなく、
「ポジティブな出来事にどれだけ気づいたか」
ということです。
幸せな人は、ポジティブな出来事が起きているから幸せということではなかったんですね。
実は私たちの身の回りでは、同じようにポジティブな出来事は起きています。
そのため私たちは日々、ポジティブな場面について気付くスキルを高める必要があります。
これからポジティブな感情の高め方を3つ紹介します。
全部同時にすると大変なので、どれか1つを選んで2週間以上かけてやってみることをお勧めします。
方法①1日のポジティブな出来事を3つ思い出す

ポジティブ感情を高める1つ目の方法は「1日のポジティブな出来事を3つ思い出す」です。
私たちはポジティブな出来事よりも、自分の人生でうまくいかなかったことについて考える方に時間を使う傾向にあります。
これは不安や抑うつを招くきっかけにもなるので問題です。
対策としては、毎晩寝る前に「今日のポジティブな出来事は何だったかな?」と考え、少なくとも3つ以上思い出してみることです。
思い出す内容はささいなことで構いません。
できれば、どうしてこのポジティブな出来事が起きたのか理由を考えるともっと効果的です。
例をあげると、次のような感じです。
(例)今日起きたポジティブな出来事
- 難しいと思っていた仕事がうまくいった(理由:前日の準備を徹底したから。周りがサポートしてくれたから)
- 職場の人からクッキーのお菓子をもらった(理由:彼女は気が利く人だから)
- 仕事からの帰宅後、アマゾンに注文した漫画が届いてた(理由:自分が好きなドキュメンタリー系の漫画だったから)
意識して考えてみると、「思ったよりポジティブな出来事って多かったんだな」というのに気づくことができます。
やり始めのうちは、毎晩3つ以上思い出すのは大変だと思いますが、続けていくとポジティブ感情を高めることができるのでお勧めです。
落ち込むことも少なくなって幸せになれば、結果的にウェルビーイングが高まって目標達成率や仕事の生産性も上げられるので最強です。
方法②感謝の気持ちを伝える

ポジティブ感情を高める2つ目の方法は「感謝の気持ちを伝える」です。
感謝はウェルビーイングを向上させるものとして最も効果の高い方法のひとつです。
研究では、700~800文字の感謝を伝える手紙を書いて本人に渡すことを推奨していますが、感謝の気持ちがわいたら言葉にして伝えるだけでもOKです。
感謝の気持ちを表に出すと、幸福度がさらにブーストすることがわかっています。
ちょっとしたことでも相手に感謝の気持ちがわいたら、ガンガン表に出したほうが得ですね。
ちなみに感謝の活かし方や高め方については、過去の記事でもまとめていますのでよかったらご参照ください。
>>参考:【VIA理論】24タイプの強みの活かし方⑥~超越性編~
感謝できることも強みのひとつです。
この感謝の強みもあわせて高めれば「人生の意義を見出しやすい」「自分の仕事が天職だと思える可能性が高くなる」などのメリットがあるのでお勧めです。
方法③ポジティブな出来事を強調する

ポジティブ感情を高める3つ目の方法は「ポジティブな出来事を強調する」です。
何か良いことがあったら、その事実をなんらかの形で強調します。
たとえば、次のような感じです。
(例)ポジティブな出来事を強調する
- 今週はずっと定時で帰ることができたから好きな映画を1本観る。
- 就きたい仕事に転職できたから自分にご褒美をあげる。
- 資格をとることができたから友達に軽く自慢してみる。
- 昇給したから家族やパートナーと美味しい料理を食べる。
- 有休でちょっとしたバカンスが取れたから遊びに出かける。
上記のほかにもいろんなやり方があると思いますが、とにかく記憶に残るような形で強調するのがポイントです。
良いことはちゃんと形にしたり思い出に残るようにすれば、ポジティブな感情は高まりやすく、結果的にウェルビーイングも上がることがわかっています。(リエージュ大学)
幸福度が低い人は、ポジティブな出来事があってもさらっと流してしまいがちなので、意識して目を向けてみるといいですね。
まとめ:気づく力がポジティブ感情を高める

ポジティブ感情を高める方法をまとめると、次のようになります。
【ポジティブ感情を高める方法】
- 方法①寝る前にポジティブな出来事を3つ書く
- 方法②感謝の気持ちを伝える
- 方法③ポジティブな出来事を強調する
ポジティブな感情を高めるというのは決して陽キャになることではありません。
悲しいのに無理やり笑うとかすると、かえってネガティブになります。
本当のポジティブとは、自分の身の回りに起きているポジティブな出来事に気づくことです。
たとえネガティブな状況であっても、ポジティブな側面も見つめる。
何でもないような変わらない1日だと感じたとしても、「今日のポジティブな出来事3つって何だったかな」と小さなことでもいいので考えてみる。
すると、意外にも自分に起きていたポジティブな場面が多くあったことに気づき、自然とポジティブな感情が高まっていくのを感じるはずです。
冒頭の方で紹介したように、私たちは80%以上の確率で目の前の「金のなる木」に気づくことができません。
お札が視界に入ったとしても、何もなかったと判断して通り過ぎてしまいます。
ポジティブ感情を高めれば、目の前の幸福にどんどん気づいてウェルビーイングを高めることができます。
仕事のパフォーマンスや自分が立てた目標を達成する可能性を上げれます。
ぜひ今回紹介したポジティブ感情を高める方法を実践して、ウェルビーイングを高めてみてはどうでしょうか。
次回はPERMAのEにあたる「エンゲージメント」の高め方に移ります。
エンゲージメントは没頭とか、フロー状態のことをさしています。
こちらも幸福度を高めるために重要な要素になるので、いくつか試してもらえればと思います。
【ポジティブ感情に関するよくある質問】

良い出来事より悪い出来事のほうが記憶に残りやすいのはどうして?

ネガティブなことを強く覚えるのは、原始時代からの本能だとされています。
ポジティブな出来事を中心に考えて過ごした先祖は、氷河時代に食べ物を確保できず生き残れませんでした。
そのため、私たちは良い出来事を覚えておくことが苦手になったと考えられています。
だから意識してポジティブなことを考えるスキルが必要なんですよね。
【参考文献・データ等】
・マーティン・セリグマン『ポジティブ心理学の挑戦 “幸福”から“持続的幸福”へ』
・キャロライン・アダムス・ミラー『実践版GRIT やり抜く力を手に入れる』
・鈴木裕『運の方程式 チャンスを引き寄せ結果に結びつける科学的な方法』
【記事執筆】あすか
【Twitter】:https://twitter.com/askalabo