【過重労働対策】健康障害を防ぐ9つの方法

仕事

長時間労働による健康被害を防止するために

「長時間労働」の問題点

出典元:O-DAN

 過重労働対策について、効果的な実務対応を9つ紹介します。

 日本の長時間労働問題は、以前からメディアでも、時には世界からも注目されて取り上げられています。

 長時間労働が続くと、脳や心臓疾患、精神障害から発生する可能性が高まります。

 長時間労働による脳や心臓疾患が発生すれば、監督署による書類送検や労災認定、企業名の公表や民事訴訟が行われます。(厚生労働省

出典元:『過労死白書

「労働時間の把握」から始める

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 長時間労働を防止するためには、「労働時間の把握」は必須です。 

 仕事の始まりの時間と終わりの時間はしっかり記録します。

 労働時間管理の方法には色々な方法がありますが、厚生労働省の「ガイドライン」によると、

タイムカード

パソコンのログオフの時間

ICカード

 などが挙げられています。

 まずは労働時間を正確に把握したうえで、具体的な過重労働対策について考えていきます。

過重労働を防止する9つの方法

出典元:O-DAN

過重労働対策1:「事前申請制」にする

 1つ目は「事前申請制」の導入です。

 残業を許可をする側が、「緊急性が低い」と判断すれば翌日以降にさせる。

 するとムダな残業を減らすことができます。

出典元:いらすとや

 残業が容易にできる環境だと「業務はまだ残ってるけど、どうせ残業すればいいか」と考えがちです。

 ですが「事前申請制」にすると定時までに仕事を終えようとする意識が高まるため効果的です。

過重労働対策2:「最終退社時間」の設定

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 対策その2は、「最終退社時間」の設定です。

 日本人は「自分は自分、他人は他人」ができない国民性が強いです。

 そのため、例えば定時で帰った人に対しても陰で文句を言われることもあります。

 これは「みんな同じ」という同調圧力が原因です。

 それなら、全員が一緒に帰れるように、決まった時間になったら

一斉消灯にする

パソコンの電源が自動的にオフにする

お店のシャッターを閉める

 などを行います。

 すると、周りの空気を読んで無駄に残ることもなくなっていきます。

出典元:O-DAN

 大阪のある市役所では、終業時刻になると全員のパソコンの電源が一斉オフになる仕組みを導入し、そもそも残業をできなくしています。

 「これだと業務が残ってしまうのでは」と思う人もいるかもしれません。

 ですが、残業が強制的にできなくなるのであれば、限られた時間で仕事を終えようと一生懸命になるため、むしろ効率的に作業が進みます。

 インドの「ソフトグリッド」という企業でも、定時に近づくとモニターに「帰ってください」というメッセージを表示させています。

 最終的にパソコンがロックするという方法でスタッフの長時間労働を防いでいます。

 つまり、確実に残業を減らしていくためには、物理的にできないような状況や仕組みをつくればいいのです。

 一斉に作業を止めることが難しければ、部署ごと、個人ごとでするといいですね。

出典元:O-DAN

過重労働対策3:「会議」を効率化させる

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 3つ目の対策は、「会議の効率化」です。

 立教大学の中原教授によれば、日本は会議で年間67万時間をムダにしている。これは15億円の損失であることを述べています。

 会議でのムダな原因の一つは、同調圧力の強さにあります。

 本音ではムダだと思っても「非常識だ」と言われそうでなかなかいえません。

 そのため、

前日に予め資料を配布し、当日の会議をスムーズに進行させる。

・会議時間をあらかじめ決めておく

LINEで情報を共有する

 などで対応します。

 また、参加者が全員立って会議を行うのも効果的です。

出典元:アイリスオーヤマHP

 実際にアイリスオーヤマという会社では立ち会議をしています。

 「立ったままだと疲れるから早めに情報共有や決定をしよう」とするためで、時短短縮化にも繋がっているようです。

【コラム①】人生の幸せは人間関係で決まる

出典元:O-DAN

 ここで、過重労働を防止する方法の続きにいく前に、そもそも私たちが仕事に割く時間を減らしたほうがいい根本的な理由についての研究を紹介します。

 ハーバード成人発達研究の「人の幸せ」に関する研究です。

 なんと75年にわたる成人を追跡した研究で、「人生が幸せになるかどうか」は、「人間関係がどれだけ充実しているか」によって決まるということを証明しました。(「ハーバード成人発達研究」)

 私たちの大半が、人生の中で「仕事」が大きな割合を占めています。

 仕事に時間を使えば使うほど、私たちは家族や友人、恋人やそれ以外の大切な人たちと過ごす時間が削られていきます。

 多くの人にとって自分たちが幸せな人生を送るためには、仕事にかける割合をできるだけ減らして、その分を大切な人たちとの時間に使っていくことが大事になっていきます。

出典元:O-DAN

 「なんのために無駄を減らし、時間を生む必要があるのか」

 その答えの一つを、この研究では教えてくれているのかもしれません。

 では、具体的な「過重労働対策」の続き、4つ目の対策を紹介していきます。

過重労働対策4:「ペーパーレス化」

出典元:O-DAN

 次は「ペーパーレス化」です。

 実はいま、行政手続がネット上でもできるようになっています

 近年、その行政手続がデータで受付できる書類の幅を広げました。(「e-Gov電子申請」)

 これまで郵送とか役所の窓口でしかできなかったのが、ようやくネットでできるようになったという感じですね。

 仮に1つの役所に手続行くのに会社から往復1時間かかるとしたら、8つの役所に行くと仮定するとざっくり8時間かかる計算です。

 それが会社にいながらでもできるのであれば、8時間分の移動時間、つまり1日分相当の労働時間を作ることができるということになります。

 また、会社内で保管している書類で使用頻度が少ないものはPDF化したり、普段使う資料でもタブレットで共有して会議資料の準備もデータで共有するとよりいいですね。

 すると、印刷したりホチキスでとめたりといったことをしなくてもいいので、時間短縮にもつながります。

 ちなみにあなたがもし転勤のある会社に勤めていた場合、自分がもっている資料をデータベース化しておくと、荷物を減らすことができるので引っ越し代の節約にもなります。

 また、人は物を探す時間に1日平均10分くらい使うそうです。

 なので、物を見つけやすくしてムダな時間を減らすためにも、紙系の書類はペーパーレス化して物を減らすといいですね。

過重労働対策5:「変形労働時間制」の活用

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 5つ目の対策は、「変形労働時間制」の利用です。

 法的な手続きを取れば運用することが可能です。

 「変形労働時間制」というのは、簡単に言うと「労働時間を平均でみる」というものです。

 「変形労働時間制」には、大きく1ヶ月単位と1年単位があります。

 労働時間は原則1日8時間、週40時間までですが、これを平均して週40時間にするのであれば、基本的に自由に労働時間を設定してもいいというものになります。

 たとえば月の3週目から4週目の時期が決算業務などで忙しいのであれば、上の図(左)のように

・1週目から2週目の週を週35時間

・3週目から4週目の時期の週を週45時間の労働時間

 に設定しますします。すると、平均40時間なのでOKというものになります。

 1週目から2週目の週を週35時間で設定できれば、週40時間働かなくてもいいので、合計で10時間の労働時間を削減できます。

過重労働対策6:「フレックスタイム制」の活用

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 6つ目は、「フレックスタイム制」の利用です。こちらも変形制の1つです。

 自分で労働時間を自由に選択することで、柔軟に対応できる制度になるので、細かい時間的制約を受けない仕事の進め方ができます。

 総務・経理などの管理部門や、営業部門、研究開発部門などに向いています。

【コラム②】企業の風土も改革する

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 パソコンやタブレット等を使ってペーパーレス化すれば時短に繋がることを知っていても、年齢層が高い人ほどそれが使えない人って多いですよね。

 特に日本はまだまだ年功序列です。

 上にいる立場が「紙の書類のほうが使いやすいんだよね」と言われてしまうと、なかなか若い社員たちが意見をいえず、本来であれば減らせるはずの無駄な作業を続けてしまいます。

 そのため長時間労働削減を根本的に変えていくためには、これまでの企業の意識や風土、価値観も同時進行で変えていくような改革も必要となります。

出典元:O-DAN

 また「残業していると評価される」と考える社員も多く、サービス残業や休日出勤をしても構わないという姿勢が企業に対する忠誠心と思い込んでいる場合もあります。

 経営者や管理職がそういう価値観だと、社員もそうした価値観にあわせて働いてしまいます。

 根本的にサービス残業をなくし、長時間労働を減らしていくためには、上にいる人たちが価値観を変えていくことも必要です。

 それでは、最後の残り3つの具体的な過重労働対策について紹介します。

過重労働対策7:「テレワーク」の導入

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 7つ目は「テレワーク」の導入です。

 テレワークを導入すると、通勤時間も制服とかに着替える時間もなくすことができます。

 テレワークは、tele(離れたところで)、work(働く)から作られた言葉で、パソコンやスマホなどの情報通信技術を活用した、場所と時間にとらわれない柔軟な働き方のことをいいます。

 テレワークは「在宅勤務」であったり、ノートパソコンとか携帯電話等を利用することで労働者が自由に働く場所を選択することができる「モバイル勤務」などいろいろあります。(参考:【専門家が解説!】テレワークのメリットまとめ

 実際、厚生労働省「テレワークモデル実証事業」が行った「テレワークのメリット」に関するアンケート調査では、「電話や話声等に邪魔されず、業務に集中できる」が「76.3%」と堂々の第1位の結果となっています。

 また、育児期利用者の「74.1%が「テレワーク」は、「育児」と両立ができるということでメリットだと感じています。(厚生労働省

 一方で、会社の方も、「育児」と両立できるということで、「離職率」が減るということも挙げられています。(厚生労働省「テレワークのガイドライン」

出典元:O-DAN

過重労働対策8:「アウトソーシング」する

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 みなさんが学生の時、学校の先生が部活の顧問をしていませんでしたか?

 部活の顧問の先生は、できればプロのコーチから教えてもらいたいと考えたはずです。

 テニスの顧問の先生を、倫理の先生がするのはおかしい。

 一方で学校の先生も、自分の専門外のことを教えるよりも、プロに任せたいと考えるはずです。

 すると残業時間も減るし、生徒も大喜び。一石二鳥です。

 職場もそうです。

 専門の人を雇ってアウトソーシングすることで、仕事が早く終わり、更に自分の専門的なところに力をいれることが可能になります。

出典元:O-DAN

 アウトソーシングすると生産性が上がり効果的です。

 予算に余裕があれば外部に発注するといいですね。

過重労働対策9:「ノー残業デー」の徹底

 

出典元:O-DAN

 最も広く取り入れられているのが「ノー残業デー」の徹底です。(経団連

 「ノー残業デー」の徹底は、企業の「67.8%」が取り入れており、長時間労働の削減の取り組みとして最も多いものです。

 日本人の同調圧力の強い国です。

 これを逆に利用すれば「みんなが帰るなら、わたしも帰ります」という状況を作ることができます。

出典元:経団連「ワーク・ライフバランスへの取組み状況

 ただ「ノー残業デー」でも働こうとする人はいるので、その場合は、「事前申請制」をつかって、どうしてもという場合は残業を認めるといいですね。

 もし「事前申請制」を使う人が多くなった場合は、一斉消灯時間も取り入れるとより効果的です。

 今は「労働時間=生産性の高さ」の時代

出典元:O-DAN

 「労働時間=成果」の時代は終わりました。

 これからは「労働時間=生産性の高さ」の時代です。

 いまは少ない労力で最大の成果を出せる能力の高い人が求められています。

 こういった事実からも私たちは「限られた時間のなかで、どう高い成果を出すか」という方向性で労働時間の管理について考えていくことが大切です。

 過去の歴史を見てみると、18世紀の産業革命の時代は1日12時間の労働時間でした。

 当時工場長の中には、わざと時計の針を遅らせてそれ以上に働かせていたところもあったようです。

出典元:O-DAN

 それが、1日10時間になり、現在は1日8時間です。

 私たちの世界は少しずつ発展・進化を遂げています。

 労働時間を短縮させていくことは歴史的の流れを見ても可能です。

 今回紹介した9つの対策を取り入れれば、同じ成果を残しながらも、1日の労働時間を8時間から7時間、7時間から6時間削減を目指すことができます

 そして生まれた時間を、自分が大切にしたい人と時間を過ごしたり、気の置けない友人たちと旅行を楽しんだりする時間に充てることができれば、私たちの人生はより豊かなものになっていきます。

 9つの対策のうち1つ実施するだけでも改善します。

 ぜひ試しに取り入れてみてください。

【参考文献・データ等】

厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

厚生労働省『過労死白書

TOMA社会保険労務士法人『会社の“本気”を後押しする過重労働防止の実務対応』

(↓実務で使いやすい具体的な過重労働対策をわかりやすくまとめたもの)

石嵜 信憲『過重労働防止の基本と実務』

(↓過重労働に関する法令通達や裁判事例をまとめたもの。専門家にお勧め)

鴻上 尚史、佐藤直樹『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』

(↓日本で長時間労働が起きる背景が分かる一冊)

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