「年休」取得で人生を豊かに
自分の人生を豊かにできる方法のひとつ「年休」の制度について分かりやすく解説します。
「年休」は心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために与えられるものです。
「年休」は、ある一定の条件を満たせば、正社員やパート、アルバイトなども関係なくもらうことができます。

また「年休」は、自分の好きな音楽を聴くとか映画を観たり、家族や友人、恋人とどこかに遊びに行ったりして楽しい時間を過ごしたり、そういった生活がその後の活力に影響していきます。

今回はその自分の人生を豊かにできる「年休」について解説していきます。
「年休」が与えられる日
労働基準法という法律では、入社した日から6か月間働き続け、そのうち8割以上出勤していれば、10日の年休がもらえることになっています。

その後は、1年ごとに11日、12日と増えていきます。最大20日与えられます。時効は2年間です。
パートの人なども、要件を満たせば有休がもらえます。
パートというのは、同じ会社で働いている正社員と比べて、労働時間や働く日数が少ない人のことをいいます。(短期法第二条)
パートなどの有休は、働く日数に応じて年休の日数が与えられます。

年5日の付与義務の対象になるのは、年休を10日以上付与された労働者です。
対象者は、付与された日から1年間の間に最低でも5日以上は年休を消化することが義務化されました。(厚生労働省)
日本人が「年休」を使わない理由
日本人って、なかなか世界と比べて有休を取得しないですよね。
理由は、「日本人はみんなに気を使ってなかなか年休を取得しないから」です。

ちなみに「取得率」というのは、自分がもっている年休の日数のうち、どれだけ年休を消費したのかという割合のことをいいます。
仮に働いている人たち全員が10日年休をもっていて、みんなが8日使っていたら、この会社の年休の取得率は8割ということになります。
ただ日本人は「年休いっぱい余ってるから少しくらい使いたいけどでも使っちゃったら周りに迷惑かけちゃうし…」と「他の人に迷惑がかかる」と感じてしまう人が全体の半数以上はいるので、取得率が世界的に低いんですよね。(独立行政法人労働政策研究・研修機構)

まだ村社会的の文化が残っている私たち日本人は、年休を取得することよりも、年休を取得したことでまわりからどう思われるかを気にしてしまいます。だから年休が取得しにくい状況です。
実は欧州では、年休の取得率という概念がありません。「年休の取得率って何?」という感じです。

なぜかというと、「もっている年休は全て使い切るのが当たり前でしょ」という考え方だからです。だから世界から見て日本は大きな差がでています。
そこで日本の場合は、みんなが年休を取得すればいいということで、「他の人が年休を取得しているから、それなら、私も取得します。」「なら、自分も。」「僕も。」と連鎖をつくるために、強制的に年休を与える法律がでてきました。
厚生労働省「令和4年度就労条件総合調査」によると、令和3年度の年休取得率は58.3%です。
電気・ガス業とかは71.4%と高いのですが、宿泊業・飲食サービス業は44.3%と比較的低い状況にあります。(厚生労働省)

ただ、少しずつ年休の取得率は年々上昇傾向にありますので、将来的にはもっと高くなって、自分の好きな時間を過ごせる人が増えていくかもしれません。

「年休」5日:使うタイミング
では「少なくとも年5日の年休っていつもらえるのか」という話ですが、たとえばAさんが2023年4月1日に入社しましたとします。

Aさんの出席率が8割以上で、6ヶ月間はたらき続けたら、2023年の10月1日に10日付与されます。
この2023年の10月1日から2024年9月30日までの間、この1年間の間に5日以上年休を取得させる必要があるということです。
年休を取得したら、年休の管理簿に取得した分の記録をします。これは最低3年間は保存されます。
たとえば2023年8月4日から5日までの2日取得しましたというのであれば、それを年休の管理簿に記録していきます。

あとはその人の年休の残り日数とか年休を申請した日を書いていきます。
できれば上司も責任者も年休を認めましたという記録があるといいですね。
もし時間単位で3時間年休を取得したのであれば、1日8時間の人であれば残り5時間というふうに書いておきます。
おわりに
よく日本人って海外から「働いてばっかりだよね」とか「全然休みをとらないよね」と批判されます。
いまフランスやスペインでは、ベーシックインカムといって、年金とか雇用保険とかそういった社会保障をなくすかわりに、毎月定額でお金を給付しましょうという制度を導入しています。

しかし日本がその毎月お金を定額で給付するベーシックインカムを導入していたとしても,日本人は働くだろうと考えられています。
そういう真面目で、加えて他人との比較の中で生きる村社会の文化がまだ残っている日本では、もうみんなで年休を取得するしかありません。
強制的に年休を与える法律ができないと、日本人は有休をとらないからです。
そういった意味では、まだまだ日本は、世界から見たら世界の常識の基準までには届いていないので、今回の法改正は小さな一歩だといえます。

しかし、日本という枠組みだけでみたら、この制度はとても大きな一歩だといえるかもしれません。
【参考文献・データ等】
・e-Gov「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」
・厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説」
・労働政策研究・研修機構(JILPT)『年次有給休暇の取得に関するアンケート調査(企業調査・労働者調査)』|
・厚生労働省「令和4年就労条件総合調査の概況」
・労働調査会出版局『年次有給休暇制度の解説とQ&A改訂7版』
