最強の認知行動療法ACTのやり方④~拡張編(アクセプタンス)~

メンタル改善

※記事内に広告が含まれています。

最強の認知行動療法ACTのやり方④~拡張編(アクセプタンス)~

 ACTシリーズの続き(イントロ編脱フィージョン編観察する自己編です。

 ACTでは、ネガティブな感情をなくすのではなく、受け入れて行動できるようにするための方法を解説しています。

 前回は、

  • ネガティブな感情や思考から脱フィージョンして、物事を客観的にみることができれば、動じない自分をつくれる

 との話をしました。

 今回は、そのネガティブな感情や思考を置いていく居場所を決める「拡張(アクセプタンス)」というステップに入ります。

【図解】ACT拡張(アクセプタンス)までの流れ
筆者作成【図解】ACT拡張(アクセプタンス)までの流れ

 ネガティブな感情の居場所を決めるのは、人はネガティブな感情や思考を止めることができないからです。

 わいてくる感情や思考はコントロールしようとするとかえって逆効果になります。

 そのため、うまく自分の感情や考えを受け入れていく必要があります

 拡張のテクニックができるようになると、ネガティブな感情に飲まれなくなります。

 ただ、拡張はACTのなかで一番難しいステップです。

 なのですぐにうまくいかなくてもあまり気にしなくても構いません。

 ACTについてはラスハリスの『幸福になりたいなら幸福になろうとはしてはいけない』がお勧めです。

 ACTは一生モノの知識になるので、さらに内容を深めたい方はこの本を読んでみるといいですね。

 ではここからACTシリーズ第4弾「拡張編(アクセプタンス)」について解説します。

 ACTについてもう1度流れを説明すると、次のようになります。

【ACTの流れ】

  • ①ネガティブな思考や感情と自分を切り離す(脱フィージョン
  • ②起きたできごとを客観的にみる(観察する自己
  • ③ネガティブな感情と距離を置いて居場所をつくる(「拡張(アクセプタンス)」
  • ④いまここに集中でき、パフォーマンスが上がる(「接続(コネクト)」
  • ⑤自分の価値観にそった行動ができる。(「価値の確認」「目標に向かっての行動」

 ネガティブな感情を思考や感情がわいてきたときには「脱フィージョン」で自分と切り離して、起きたできごとを「観察する自己」で客観的に見る。

 それができたら、ネガティブな感情を置いておく場所を決める「拡張(アクセプタンス)」のステップに入ります。

 拡張ではまずネガティブな感情がわいてきたら、自分の身体のどの場所からネガティブな感情が発生しているのかを見つけます。

 たとえば、

  • 嫌な気持ちになったときに、胸の右側がざわざわしてくる感覚

 などがそうです。

 拡張では、自分の嫌な気持ちは体(ここでは胸の右側)から発生しているんだと考えます。

 こうすることによって、嫌な感情から距離を置けます

 具体的な拡張の方法は次の5つです。

【拡張(アクセプタンス)の方法5つ】

  • 方法①ボディ・アウェアネス
  • 方法②4つの拡張ステップをふむ
  • 方法③独り言アクセプタンス
  • 方法④イメージのアクセプタンス
  • 方法⑤衝動の波をサーフィンする

 これら拡張のテクニックは、ACTのなかでは一番練習が必要な部分です。

 なので具体的なテクニックの実践にうつる前に、拡張ができるためのポイントを10個紹介します。

 拡張をするコツは次の10個です。

 次の10のポイントを意識するだけで拡張がやりやすくなります。

拡張ができるための10のポイント

  • 1感情は一つに絞る(例)怒りと悲しさを感じたら、怒りだけに注目する。
  • 2集中が切れたら脱フィージョンする(例)「自分はダメなやつなんだ」と考えているな
  • 3良い気分になることを期待しない(感情と対立することになるため)
  • 4感情はくりかえしやってくる。そのたびに脱フィージョンする
  • 5感情がすぐに変化しなくても気にしない(いつ変化するかはわからないため)
  • 6感情は追い出そうとせず、受け入れる
  • 7不快感のあとに喜びがあることを知る
  • 8深呼吸をする
  • 9やればやるほど効果が出るため機会があれば実践する(信号待ち、待ち合わせのときなど)
  • 10コントロールしようとしない(感情はそもそもコントロールできないため)

 拡張はACTのなかで一番つまづきやすいところです。

 でもやってみると「あ、こういう感じなんだ」と気づくはずです。

 一生モノの財産になるので、ぜひできるまでやってみてください。

 ではいよいよ具体的な拡張の方法について紹介していきます。

 ネガティブな感情と距離を置く1つ目の方法は「ボディ・アウェアネス」です。

 拡張では、自分の体の感覚に気づくことからスタートします。

 ネガティブな感覚が自分の体のどの部位からきているのかをピンポイントで把握することから始まります。

 なのでこの方法は、拡張の準備運動のようなものだと思ってください。

 「ボディ・アウェアネス」というエクササイズでは、自分の体の1か所につき10秒注意を向けるということをします。

 いまから目を閉じて、次の箇所にそれぞれ10秒ずつ注意を向けてみてください。

  • (左足が軽い感じがするなど)
  • ひざ(右ひざがぞわぞわするなど)
  • 背骨(姿勢や曲がり方など)
  • 呼吸(リズム、スピード、深さなど)
  • (右腕が少し重いなど)
  • 首と肩(右肩がジンジンしてるなど)
  • 体温(どの部分が温かくて冷たいかなど)
  • 肌の表面(しっとりしている、つるつるしているなど)
  • 頭からつま先までスキャンし、痛みや緊張感、不快感がないか注意してみる(頭がズキズキするなど)
  • 頭からつま先までスキャンし、気持ちのいい、心地よい感覚があるか注意してみる(お腹周りが温かくて気持ちがいいなど)

 もしネガティブな感情を感じたら、脱フィージョンで感情と自分を切り離して、そのネガティブな感情が自分の身体のどこから出てきているのかスキャンします。

 自分が感じていると思うと飲み込まれるので、ネガティブな感情と距離をおくために「自分の身体が感じている」と考えます。

 たとえば、

  • 先輩に怒られた→胸がざわざわした→自分の胸が不快感を感じている
  • 明日から出勤日→足が重い→自分の足が面倒くさいと感じている
  • ミスをした→胃がしめつけられる→自分の胃がストレスを感じている

 というような感じです。

 このようにネガティブな感情を感じたら、自分ではなく自分の身体が感じていると考えます。

 自分の感情が身体のどこから発生しているのかを注意を向けると、自然と観察する自己になれるので距離を置くことができます。

 方法①の「ボディ・アウェアネス」ができるようになったら、次は「4つの拡張ステップ」をふみます。

 4つの拡張ステップとは「1観察する→2息を吹きこむ→3感情の居場所をつくる→4受け入れる」です。

【4つの拡張ステップ】

  • ステップ1観察する:自分の体のどこで不快感を感じているのか観察する。
  • ステップ2息を吹きこむ:不快感を感じる場所に息をふきこむイメージで呼吸する。息を吐くときにその場所で風船が大きくなっていくような感じで呼吸する。
【図解】ACT認知行動療法のやり方(拡張)
筆者作成【図解】拡張(アクセプタンス)のイメージ図
  • ステップ3感情の居場所をつくる:感情のスペースをつくるための場所を体のなかにつくる。
  • ステップ4受け入れる:ネガティブな感情を追い出そうとせず、「ここにいてね」とつくった居場所に置いておく。

 ネガティブな感情を感じたら、いつものように「脱フィージョン」します。

 その後、さきほど実践したボディスキャンで自分の身体のどこに不快感を感じているのか注目します。

 たとえば、イライラしたときに頭の後頭部あたりにズキズキするような不快感を感じたとします。

 その不快感を感じた場所に深呼吸で息を吹きこみます。

 息はスゥ~と吸って、フゥ~と吐くときに頭の後頭部に風船が大きくふくらんでいくようなイメージで呼吸をします。

【図解】拡張(アクセプタンス)のイメージ図
筆者作成【図解】拡張(アクセプタンス)のイメージ図

 風船が大きくふくらんだら、そこにネガティブな感情が自由に動きまわるためのスペースとしてポンとおいておきます。

 風船はどこまで大きくしてもかまいません。

 「いま感じてる不快感はいつもより強いな」と感じたら、自分が十分だと思う大きさまで広げます。

 決して、ネガティブな感情を追い出そうとせず、「ここにいてね」という感じでそのスペースにそっと置いておきます。

 ときどきそのネガティブな感情がその居場所から出ていってしまったときはまた脱フィージョンして、「ここにいてね」とそのスペースに戻します。

 ネガティブな感情を感じたときに、次の4つの拡張ステップ

  • 1観察する
  • 2息を吹き込む
  • 3感情の居場所をつくる
  • 4受け入れる

 を何回もくりかえすと、ネガティブな感情にとらわれるのが減っていきます。

 ちなみに感情の居場所としてイメージするのは風船でなくてもOKです。

 キューブとかシャボン玉とかあなたがしっくりくるもので自由にイメージして、ネガティブな感情の居場所をつくってください。

 ネガティブな感情と距離を置く3つ目の方法は「独り言アクセプタンス」です。

 次のような独り言をいってみると、拡張がしやすくなります。

【感情を受け入れやすくなる独り言(例)】

  • 「自分はこの感情は好きじゃないけど、居場所をつくってあげよう」
  • 「この感情は不快だけど受け入れよう」
  • 「私は○○という感覚をもっている」
  • 「この感情は好きじゃないし、正直認めたくないけど、いまこの感情を自分は受け入れよう」

 このような独り言を実際に口に出して言ってみると、ネガティブな感情も受け入れやすくなります。

 もちろんこれらの言葉はあくまで例なので、自分で独り言をつくってもOKです。

 「感情を受け入れるのってあんまり上手くいかないな」と思ったら、これらの独り言をいってみると拡張もうまくいくかもしれません。

 ネガティブな感情と距離を置く4つ目の方法は「イメージのアクセプタンス」です。

 これは画像や映像などの視覚でイメージできる人に向いています。

 イメージのアクセプタンスは次の2つのステップで行います。

【イメージのアクセプタンスの手順】

  • 1自分の体をスキャンしてみて、最も不快な感覚がある場所を選ぶ
  • 2その不快な感覚を形にするとどんな感じになるかイメージする

 たとえば、ストレスで頭の後ろの部分がビリビリと不快な感覚があるとします。

 その部分を引っ張りだして、それを実体化するなら

  • どんな色か
  • 重さか
  • 手触りか
  • 音か
  • 温度か
  • 形でいるか

 などを細かくイメージします。

 もし具体的なイメージが難しければ、アニメのキャラクターを使うとやりやすくなります。

 たとえば、涙目のピカチュウが自分の頭の後ろをつかんでいて、ビリビリと電磁波をだしている感じをイメージするなどです。

 ピカチュウが涙目なので心配して触ろうとしたら、ビリッっと静電気がはしって痛みを感じる。

 だから自分の頭の後ろに大きなゴム風船のスペースをつくって「大丈夫。ここにいてね」とネガティブな感情の居場所をつくる。

 やり方は4つの拡張ステップで紹介した「息を吹きこむ」と同じです。

【図解】ACT認知行動療法のやり方(拡張)
筆者作成【図解】拡張(アクセプタンス)のイメージ図

 ネガティブな感情の居場所をつくって、そのネガティブな感情が自然と消えていくのを待つ。

 ACTでは決して感情を追い出そうとせず、受け入れるのが大事です。

 最後、ネガティブな感情と距離を置く5つ目の方法は「衝動の波をサーフィンする」です。

 これはやってくる波は止めることができなくても、サーフィンすることはできるというものです。

 僕らは時々、衝動の波に襲われることがあります。

  • 理不尽なことを言われて怒りを感じたとき
  • 何もかも上手くいかなくて涙があふれそうなとき
  • 先の見えない未来に逃げ出したくなるほど恐怖を感じたとき

 そんな衝動にかられたときでも、拡張で衝動の居場所をつくることができます。

 やり方は次の2ステップです。

【衝動のサーフィンの手順】

  • 1自分の体をスキャンしてみて、自分の体のどこで衝動の波が起きているのかを観察する
  • 2衝動の波が落ち着いたときに、衝動にまかせて行動するべきか判断する

 たとえば、上司から「何か気になることはある?」と聞かれて、気になることを答えた。

 すると「それってあなたの感想ですよね?」と言われて、こいつを殴ってやろうかと怒りの衝動がわいてきた。

 このときボディスキャンをして、「あ、自分の右腕がピクピクとしているな」と気づきます。

 その時は、自分の右腕に息を吹きこんで居場所をつくって、「ここにいてね」と衝動のスペースをつくります。

 居場所のなかで衝動の波が落ち着いて、さざ波くらいに穏やかになったときに、その衝動に従って行動したほうがいいか判断します。

  • 「怒りの衝動にまかせて相手を殴りたい」という衝動に従って行動してプラスになれば行動する。マイナスになりそうなら行動しない。

 役に立たないなら行動しなければいいときいて、「そんなの当たり前でしょ」と思ったかもしれないですが、なかには衝動にまかせてしまう人もいます。

 なので、衝動の波が落ち着いたときに行動するかどうかを判断すると後で後悔せずに済みます。

 波がまだ荒れているときに価値の判断をすると、波にのまれてしまうからです。

 衝動の波に耐えるのではなく、それを受け入れてサーフィンをする。

 衝動のサーフィンは、その衝動が上昇しているのか、下がっていっているのか観察しながら行うといいですね。

 ACT第4弾「拡張(アクセプタンス)」のまとめです。

  • 拡張(アクセプタンス):感情と距離を置いてその感情の居場所をつくること。

拡張ができるための10のポイント

  • 1感情は一つに絞る(例)怒りと悲しさを感じたら、怒りだけに注目する。
  • 2集中が切れたら脱フィージョンする(例)「自分はダメなやつなんだ」と考えているな
  • 3良い気分になることを期待しない(感情と対立することになるため)
  • 4感情はくりかえしやってくる。そのたびに脱フィージョンする。
  • 5感情がすぐに変化しなくても気にしない(いつ変化するかはわからないため)
  • 6感情は追い出そうとせず、受け入れる。
  • 7不快感のあとに喜びがあることを知る。
  • 8深呼吸をする。
  • 9やればやるほど効果が出るため機会があれば実践する(信号待ち、待ち合わせのときなど)
  • 10コントロールしようとしない(感情はそもそもコントロールできないため)

【拡張の方法5つ】

 くりかえしますが、ACTのなかでも拡張がもっとも難しいステップです。

 ですが、練習してスキルとして身につけることができれば、一生モノの財産になります。

 拡張の一番いい練習方法は、困難な状況とか、自分の人生を意味のある方向に動かしてくれるような状況でつかってみることです。

 たとえば、

  • 職場で初めてのことに挑戦しているとき
  • 退職または転職するとき
  • 新しいスキルを学びはじめるとき

 などがそうです。

 自分の感情や衝動に注意を向けて、その感情の居場所をつくることで初めて、いま自分がやっていることに僕らは集中することができます。

 集中するためには、現在と接続すること、つまり「いま、ここにつながる」ことが重要になっていきます。

 そこで次回は、大事ないまこの瞬間に没頭するための「接続編(コネクト)」に入ります。

 僕らは集中しているときが幸せです。

 なぜなら、集中しているときは余計なことを考えないからです。

 なので「接続編」では、どうやって「いま、ここにつながる」ことができるのかについて解説します。

 ACTについては、ラスハリスの『幸福になりたいなら幸福になろうとはしてはいけない』がとてもお勧めです。

 ACTができるようになると

  • ストレスと不安が軽減する
  • 自信のなさを克服する
  • 意味のある人生を創ることができる

 などのメリットがたくさんあるので、もっとACTを理解したいという方は、ラスハリスの本もあわせて読んでみてください。

 >>【次回】最強の認知行動療法ACTのやり方⑤~接続編(コネクト)~

 <<【前回】最強の認知行動療法ACTのやり方③~観察する自己編~

【記事執筆】あすか

【X(旧Twitter)】:https://twitter.com/askalabo

【Instagram】:instagram.com/aska.labo