最強の認知行動療法ACTのやり方①~イントロ編~
今回はACTシリーズということで、最強の認知行動療法ACTについて徹底解説します。
ACTは簡単にいうと、「心を上手にコントロールする方法」のようなものをいいます。
心がネガティブな考えや感情にとりつかれそうになっても、自分の心をコントロールできる認知行動療法の1つです。
ACTはメンタルコントロールのなかでは史上最強のテクニックとして、近年注目されています。
瞑想だと何十年も続けて行う必要があるのに対し、ACTは早くて1分以内でできるようになるからです。
ACTでは、柔軟な心をもつことを目指しています。
自分の心が固いままだと、いつかポキッと折れてしまいます。
例えていうと、金沢の雪つりみたいなイメージです。

金沢では木が積もった雪の重さで折れないように雪つりと呼ばれる対策をするのですが、これは実は硬い木にしかせず、柔らかい枝にはしません。
理由は、硬い木は積もった雪の重さに耐えようと踏ん張るのに対し、柔らかい枝は雪が積もると垂れて積もった雪を落とすからです。
僕らの心も同じようなもので、「自分はこうじゃなくてはいけない!」とガチガチに固めてしまうと、いつか日々積もる負担に耐えられなくなって、ポキッと折れてしまいます。
ですがACTを使えば、折れない心をつくることができます。
心が柔らかくなるので、積もった雪を落とすことができるようになるからです。
ACTは統合失調症(幻聴、幻覚など)の人の再入院が半分減るくらい強力なメンタルコントロール法です。
ACTにはいくつかステップがあるので、何回かに分けて解説したいと思います。
ACTは認知行動療法が専門になっているので、それに関する本はどれも難しいです。
ですがラスハリスの『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』は一般の人も理解できる内容で書かれているのでお勧めです。
それでは、ACTシリーズのイントロということで、まずはACTの概要について説明したいと思います。
最強のマインドフルネスACTとは?

そもそもACTというのは、気持ちを明るくしようとか、ポジティブになろうとかそういうものではありません。
心を楽にするというのも違います。
むしろ、ACTは自分が今辛い状況だとか、苦しいことをどう受け入れるかに光をあてています。
僕らは油断すると、「自分はなんてダメな奴なんだ…」と思考の罠にハマって、会社を辞めたり、人と関わらなくなったりします。
でもACTは違います。
あくまで「自分はダメな奴」という思考が沸いているだけであって、実際にネガティブな行動をしなければならないわけではないと考えます。
思考は言ってしまえば妄想のようなもので、単なる言葉の羅列にすぎません。
勝手に湧いてきてしまう思考や感情は、ありのままに受け入れる。
でも行動はコントロールできるので、安定したパフォーマンスを維持したり、人間関係もちゃんとこなせるようになります。
「悩みが頭から離れないときに起こるデメリットと個人でできる対処法4選」では個人で心を癒せる方法についてまとめましたが、ACTも専門家に頼らず一人でできる方法です。
メンタルコントロールのACTを知っていれば、自分で自分を助けることができます。
あなたがACTをするべきか分かる15の質問

では、どのようなタイプの人がACTを実践した方がいいのでしょうか。
あなたがどれだけACTをしたほうがいいのがわかる質問があります。
次の15の質問に「はい」の数がどれだけあるか数えてみてください。
【ACTをするべきか分かる15の質問】
- 1 私は成功するための感情コントロールが上手いと思っている。
- 2 不安はよくないものだと思う。
- 3 ネガティブな思考や感情は、コントロールするか消そうとしないと自分に悪影響を及ぼすと考えている。
- 4 私は自分の心にわきあがる強い感情を恐れている。(怒りや悲しみなど)
- 5 何か重要なことを成し遂げるとき、疑いの心を振り払っておく必要がある。(本当にこの仕事で上手くいくんだろうか…失敗しないだろうか…など)
- 6 ネガティブな思考や感情が出たら、すぐにそれを追い払う必要がある。
- 7 ネガティブな思考や感情をコントロールするには、それらを分析して、その結果を利用して追い払う必要がある。(なんでこんな感情をもっているんだろう?と分析して追い払う)
- 8 ネガティブな思考や感情を減らしたり追い払うことができれば、自分は幸せになれると思う。
- 9 ネガティブな感情をコントロールできないのは、自分の怠けや弱さの表れだと思う。
- 10 ネガティブな思考や感情があるのは、メンタルに問題がある、心理的に問題を抱えている証拠だと思う。
- 11 人生をコントロールする人は、自分の感情もコントロールしている。
- 12 不安を感じるのは悪いことなので、全力で避けている。
- 13 ネガティブな思考や感情が起こるのは、自分に欠点があるからだ。
- 14 何か重要なことをするときには、いい気分でなければならない。
- 15 気に食わない思考や感情は、それを考えないようにすることによって抑える。
15の質問のうち、「はい」の数が1つでも当てはまったらACTをすると人生が変わります。
つまりだれでも思考や感情の罠にハマりやすいということですね。
思考や感情の罠から抜け出すには、そもそも思考や感情はコントロールできないものだということに気づく必要があります。
ACTには6つの行動原則

ACTには6つの行動原則というのがあって、これを実践すると人生を変えることができます。
心が柔軟になればなるほど、自分の目的や価値観にそって、感情にふりまわされずに行動することができます。
ACTの行動原則というのは、次の6つです。
【ACT6つの行動原則】
- ①脱フィージョン
- ②観察する自己
- ③拡張(アクセプタンス)
- ④接続(つながる)
- ⑤価値の確認
- ⑥目標に向かっての行動
順に解説します。
①脱フィージョン
ACTの行動原則1つ目は「脱フィージョン」です。
脱フィージョンとは、ネガティブな思考や感情を自分と切り離すテクニックのことをいいます。
これができるようになると、ネガティブな思考や感情に脅かされたり、心配やストレスを感じることもなくなります。
②観察する自己
ACTの行動原則2つ目は「観察する自己」です。
人は2つの自分をもっています。
「考える自分」と「観察する自分」です。
例えば、机の上に書類がたまっているのを見るとします。
その時、「自分は仕事ができないダメ人間だ…」と思うのは考える自分です。
ですが「机の上に書類が8冊ある。1冊分は1時間で終わるから、8時間あれば1日で終えられる」は観察する自分です。
この考える自分を減らして、客観的に観察する自分を増やすと、ネガティブな感情に振り回されなくなります。
③拡張(アクセプタンス)
ACTの行動原則3つ目は「拡張(アクセプタンス)」です。
拡張とは、自分が感じた嫌な感情を追い出そうとせず、自分の中に居場所をつくるというものです。
心の中に例えば、「嫌味を言われてモヤモヤする感情」を置くスペースをつくって、しばらく放っておく。
すると、自然とそのネガティブな感情が消えていく。
④接続(つながる)
ACTの行動原則4つ目は「接続(つながる)」です。
接続は、いまこの瞬間とつながることをいいます。
過去についてくよくよ考えたり、未来のことに心配したりせず、いま目の前で起きていることに完全に集中できます。
いわゆるゾーンと呼ばれますが、これができると行動のコントロールも上手くいきます。
⑤価値の確認
ACTの行動原則5つ目は「価値の確認」です。
人生を意味あるものにするために、自分なりの価値観をはっきりとさせ、それとつながることをいいます。
あなたの価値観は、自分が心の中で一番大切にしているもの、どんな人になりたいか、自分にとって何が重要で意味があるのかを反映させます。
価値観は自分の人生に方向性を与えてくれるので、人生を変えるモチベーションになります。
⑥目標に向かっての行動
最後、ACTの行動原則6つ目は「目標に向かっての行動」です。
自分なりの価値観で人生の方向性を決めたら、あとはそれに従って行動するだけです。
あなたが進みたい道がはっきりわかったら、何度失敗してもチャレンジすることができます。
まとめ:ACTができると人生変わる

ACTについてまとめると、次のようになります。
- ACTとは、自分のネガティブな思考や感情を受け入れ、自分の価値観にそった行動をすること。
【ACT6つの行動原則】
- ①脱フィージョン:ネガティブな思考や感情と自分を切り離す。
- ②観察する自己:自分を客観的にみる。
- ③拡張(アクセプタンス):嫌な感情を追い出そうとせず、自分の心の中に居場所をつくる。
- ④接続(つながる):いま目の前で起きていることに完全に集中し、行動をコントロールする。
- ⑤価値の確認:人生を意味あるものにするために、自分なりの価値観をはっきりさせる。
- ⑥目標に向かっての行動:自分の価値にそった行動をする。
【ACTの流れ】
- 自分の思考と感情を脱フィージョンで切り離す→起きたできごとを客観的にみれる→いまここに集中できる→パフォーマンスが上がる→自分の価値観にそった行動ができる。
そもそも僕らは思考と感情をコントロールすることができません。
思考と感情は、湧き水のように自然と心の中にでてくるものです。これを無理やり押さえつけようとするといつか限界を迎えます。
冒頭でお話しした金沢の雪つりのように、積もる雪に耐えようとするといつかポキッと心が折れてしまいます。
思考や感情を追い出そうとするのではなく、それらを受け入れる。
ありのままに受け入れることができると、積もった雪が自然と落ちていきます。
僕らはかんたんに自分と思考がくっついてしまうので、まずは思考は単なる言葉の羅列であって、自分に悪影響を与えるものではないことに気づくことが大事です。
そこで次回は、思考と感情を切り離す「脱フィージョン」の方法について解説します。
脱フィージョンができるようになると、遊戯王の主人公のように、もう一人の自分が自分を見ているような感覚になることができます。
つまり、一歩引いて自分を観察することができるので、わいてきた思考や感情の影響を受けてネガティブな行動をしてしまうこともなくなります。
ACTについてさらに深めたいならラスハリスの『幸福になりたいなら幸福になろうとはしてはいけない』がお勧めです。
ACTができるようになると人生変わります。
ACTの本のなかでは一番読みやすかったので、気になる方はチェックしてみるといいと思います。
>>【次回ACT第2弾】最強の認知行動療法ACTのやり方②~脱フィージョン編~
ACTに関するよくある質問

私たちが感情に振り回されてしまうのはなぜですか?

起きていることと、考えていることを分けれていないからです。
僕らが頭の考えていることと実際に起きていることは別ものです。
例えば、給料が上がらないのは出来事ですが、思考は妄想です。
「じゃあどうやったら上げられるかな」と思う人もいれば、「自分は能力がないんだ…」と思う人もいます。
つまり、事実に対して感想をいってるだけなので、それに気づけると感情に振り回されなくなります。
【参考文献・データ等】
【記事執筆】あすか
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