個人でできるウェルビーイングを高める方法⑥~ネガティブ感情編~[ラスト]
幸せを決める6つの要素の続き(イントロ編、1ポジティブ感情編、2集中力編、3人間関係編、4人生の意味編、5達成編)です。
今回でいよいよ幸福度(ウェルビーイング)シリーズは最後です。
これまでは幸せを上げる5つの要素について解説しました。
が、これらを高めても幸福度をがくっと下げてしまうものがあります。
それは「ネガティブ感情」です。
ネガティブ感情って
- ポジティブな行動を妨げる
- 自分の視野を狭まってアイデアが出てこなくなる
- 他人に心を開けなくなる
などのデメリットがあるので、私たちは幸せを感じにくくなるんですよね。
それから脳がネガティブな感情の処理に多くの領域を使ってしまうので、私たちの能力がどんどん下がっていきます。
このような状態に陥ると、いつまでもネガティブな状況から抜け出せなくなってしまうので問題です。
ではどうすればいいか?
ネガティブ感情から抜け出すうえで大きなキーとなるのが、反すう思考をなくすことです。
反すうとは、ネガティブなことをずっと繰り返し思い出したり、引きずったりすることをいいます。
これはかなりメンタルにも悪い。
嫌なことを思い出すデメリットでも紹介しましたが、反すう思考は
- うつを引き起こす
- イライラしやすくなる
などの悪影響があります。
人間は悪いことのほうが良いことよりも2倍以上重要に感じる。
せっかくポジティブ感情とか達成感を高めても、ネガティブ感情が大きかったら意味が無くなってしまいますよね。
なので最後に、
- 「ネガティブ感情の減らし方」
について解説して、このシリーズは終わりにしたいなと思います。
ネガティブ感情の減らし方
ネガティブ感情の減らし方は次の3つです。
【ネガティブ感情の減らし方】
- 方法①メンタルタイムトラベルで辛い感情を克服する
- 方法②1つ不満を言ったら1つ感謝を言う
- 方法③第三者の視点で自分を観察する
ネガティブ感情を減らすために大事になるのは、自分と感情を切り離すことです。
自分と頭のなかの声は全く別物。
なので、頭の思考を外から眺める必要があります。
これができるのが、今から紹介する方法です。
順にみていきましょう。
方法①メンタルタイムトラベル
メンタルタイムトラベルとは、
- 過去や未来に思考をタイムスリップさせて考えること
をいいます。
幸せを決める2つ目の要素、集中力編では、
- 目の前のことに没頭すると余計なことを考えなくなるので、できるだけ集中するのが大事
という話をしました。
ですが、集中力が切れてしまったあとは?
没頭することができないので、つい油断するとネガティブな感情に意識をすぐ持っていかれやすくなります。
その辛い感情を避けるために有効なのがこのメンタルタイムトラベルという方法です。(R)
メンタルタイムトラベルのやり方は次の2つ。
- 「楽しかった過去を思い出す」
- 「未来の自分から今を観察する」
1つずつ見ていきましょう。
メンタルタイムトラベル1「楽しかった過去を思い出す」
「自分はいまネガティブになってるなぁ…」
と感じたときは、過去の楽しかった思い出を想像するとネガティブ感情が減るとがわかっています。
楽しかった思い出ならなんでもOK。
- 「あの日の友達との旅行は楽しかったな」
- 「社会人になって親孝行できて良かったな」
- 「初めて恋人ができた時はすっごく嬉しかったな」
みたいに、自分にとって良い出来事をふと思い出す。
すると、辛いネガティブな感情に意識をもっていかれなくなります。
自然とこれからの未来にもポジティブな感情が持てるので、意識的に使うとベストです。
メンタルタイムトラベル2「未来の自分から今を観察する」
もう1つの方法は「未来の自分から今を観察する」です。
すると辛い今の心がラクになります。
なぜなら、自分を客観的に見れるようになるから。
例えば、失恋の痛みが今もまだ続いていて、胸が苦しくなってるとします。
明日もまだ辛いだろうなと思う。
心が重い状態が続いている。
でも10年後ならどうか?
ほぼ0になっているだろうなと思う。
辛い感情っていつかは消えるんだなって感じることができる。
なんなら
「そういえばフラれた日の翌日、首里城が燃えたんだよね。たぶんあれ俺のせいだわ笑 失恋したショックで出た念のせいだわ笑」
と10年後の自分は自虐ネタにするくらい、友だちと一緒に笑っているかもしれない。
このように自分の視点を現在から過去や未来にうつすと、いまの自分を一歩引いた視点で客観的にみることができるので楽になります。
ぜひ試してみて下さい。
方法②1つ不満を言ったら1つ感謝を言う
1つ不満を言ったら、1つ感謝すべきことを見つける習慣をつくる。
するとネガティブな感情にとらわれなくなります。
理由は、ポジティブな記憶は忘れやすいから。
だから習慣化して思い出す。
でもそれって難しいんじゃない?って思った方もいるかもしれません。
ですがスタンフォード大学で行動デザインラボを創設したB・J・フォッグによると、
- 「Xをしたら、Yをする」
と決めれば、習慣づけは驚くほどかんたんにできると述べてます。(R)
ここでは、
- 「1つ不満を言ったら、1つ感謝を言う」
と条件付けすればいいですね。
不満をいった瞬間に、「良い面も探そう」とポジティブなところを見つけて言う。
たとえば、
- 「ミスを指摘されてなんか嫌だな」→「間違いを教えてもらえて助かった」
みたいな感じで、1つ感謝できるところを見つける。
いざやってみると、
「自分ってこんなに不満に思ってたのか!!」
と気づきます。
人はポジティブな感情よりもネガティブな感情に捉われやすいので、悪いことの方が記憶に残りやすい。
でも不満を感謝に変換できれば、自然とネガティブ感情が減り、ポジティブな感情を高められます。
慣れてきたら不満を感じた瞬間にパッと感謝が言えるようになりますよ。
方法③第三者の視点で自分を観察する
反すう思考にハマらずに、客観的に自分の失敗を観察する方法を覚えてますか?
それは、
- 自分をいったん切り離して考える
といったことが必要でしたね。
なぜなら自分を切り離して考えないと、失敗に対するネガティブな感情をダイレクトに受けすぎてしまうから。
自分を客観的に見る方法は、
- 「第三者の視点で自分を観察する」
というもので、具体的には、
- 主語を「僕」や「私」から「彼」や「彼女」に変える
といったことをします。
するとネガティブな感情を感じずに考えることができます。
いくつか例を挙げると、次のような感じ↓
- 彼が上司に怒られて辛い気持ちになったのは、早く仕事ができるようになりたいと焦っているからだ。
- 彼女が友達のちょっとした発言にイライラしたのは、前日に睡眠がほとんどとれなかったからだろう。
このように主語を自分以外に変えると、自分と感情を切り離せることができます。
なので、
「僕は仕事ができないダメな人なんだ…」
「あの時八つ当たりしちゃったな…私って最低…」
などとネガティブな感情に捉われたら、主語を第三者に変えましょう。
これは自分の頭のなかでイメージするでもいいし、紙に書き出して整理してもOK。
実際に自分を第三者視点にするだけで、反すう思考が減って、不安からの立ち直りも早くなりますよ。(R)
ネガティブ感情の減らし方まとめ
ネガティブ感情の減らし方のまとめです。
- ネガティブ感情は、ウェルビーイング(幸福度)を減らす要素。
- ネガティブ感情が起きる原因の1つは反すう思考(繰り返し嫌なことを思い出すこと)
- ネガティブ感情は、ポジティブ感情よりも2倍以上強く感じるため、できるだけ減らしておくのが吉。対策は、ネガティブな感情や考えと自分を切り離し、反すう思考をなくすこと。
【ネガティブ感情の減らし方】
人はネガティブなことに意識を集中してしまいがち。
なので、その沼からどう抜け出すかがポイントです。
今回紹介した方法で、取り組みやすいところから試してみるといいと思います。
ここまでシリーズを読んで実践して頂いた方は、診断したときも幸福度(ウェルビーイング)は最初より大分高まったと思います。
幸福度は環境や状況によって変化するので、自分のスコアは定期的にチェックしてみるといいですね。
足りない要素を中心に上げれば、効果的に自分の幸福度をアップできます。
人によって夢や目標はバラバラですが、私は「幸せになりたい」は誰もが一度が抱く願望だと思ってます。
なのでこれまでのシリーズで紹介した方法を使って頂けると嬉しいです。
間違いなくあなたの幸福度(ウェルビーイング)は上がることを約束します。
それぞれ1つずつでもいいので、ぜひ習慣として取り入れてみてください。
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【記事執筆】あすか
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ネガティブ感情に関するよくある質問
そもそもどうして反すう(繰り返し嫌なことを思い出すこと)をしてしまうの?
人が反すう思考をする理由の一つは、危険を回避するためとされています。
つまり、これから実際に起こるかもしれないことに対して警戒ができるから。
ただ反すう思考が行き過ぎると最悪うつになったりするので、対策が必要になるということですね。
【参考文献・データ等】
- マーティン・セリグマン『ポジティブ心理学の挑戦 “幸福”から“持続的幸福”へ』
- グレッグ・マキューン『エッセンシャル思考』
- BJ・フォッグ『習慣超大全——スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』
- Jordi Quoidbach, Elizabeth V. Berry, Michel Hansenne, Moïra Mikolajczak(2010)Positive emotion regulation and well-being: Comparing the impact of eightsavoring and dampening strategies.
- Ethan Kross, Emma Bruehlman-Senecal, Jiyoung Park, Aleah Burson, Adrienne Dougherty, Holly Shablack, Ryan Bremner, Jason Moser, Ozlem Ayduk(2014)Self-Talk as a Regulatory Mechanism: How You Do It Matters.