【幸せを決めるPERMA理論】ウェルビーイングの高め方④~人生の意味編~
幸福論シリーズの続き(診断編、ポジティブ感情編、エンゲージメント編、人間関係編)です。
前回から引き続き、ポジティブ心理学で有名なマーティン・セリグマン博士が提唱する「幸福度アップに繋がるPERMA理論」を紹介していきます。
今回は、幸せを決める4つ目の要素「人生の意味(M)」の高め方に入ります。

これまでお話ししている幸せな状態を決める要素というのは、
ポジティブな感情(P)、エンゲージメント(E)、人間関係(R)、人生の意味(M)、達成(A)
の5つから成り立っているというものでしたね。
これらの頭文字をとってPERMA(パーマ)と呼んでます。
僕らは目標を達成すれば幸せだと思いがちですが、実際は逆で、幸せな状態にならないと目標は達成できません。
ゲームで例えると、主人公のHPやスキルが低い状態でボスに挑んでも倒せないのと一緒です。
まずはボスを倒せるまでのコンディションを高める必要があります。
5つのステータスはそれぞれ数値化できるので、まだ診断してない方は受けておくと足りない要素がわかるので便利です。
ではこれから人生の意味(M)について見ていきましょう。
人生の意味(M)

幸せな人は自分なりの人生の意味を持っています。
「人生の意味」といっても「私はこの世界を変えるために生まれたんだ!」とかそんな大層な話ではありません。
「自分の得意分野を活かして周りの役に立とう」とか、自分なりに仕事をする上での意味を見出す感じです。
自分で見出した意味であれば、誰かに認めてもらえなくても目標達成に向けて精力的に活動することができます。
人生の意味を見出すと健康寿命が延びる?

人生の意味を見出すと、大きなメリットがあります。
それは、私たちの健康寿命が延びるということです。
実際、人生の意味が私たちの健康寿命とも関係があるという事実を調べた研究があります。
「人生の意味」について50歳以上の男女6,985人を対象に調査したミシガン大学の研究によると、人生の意味を見出している人ほど寿命が高いということがわかっています。
具体的には「あなたにとって日々の活動は重要だと感じますか?」など、人生の意味に関する質問をいくつか行い、6点満点で採点しています。
採点から5年経って、もう一度調査をしてみると次のような結果になりました。

人生の意味スコアが平均5点以上のグループは、最も低かったグループよりも約2倍生存率が高かったのです!
自分なりの人生の意味をもっていると、日々の生活にストレスを感じなくなるのかもしれないですね。
人生の意味(M)の高め方

ではここから人生の意味の高め方について具体的な方法を紹介します。
「人生の意味」というのは自分の主観的なものなので、「自分が何かを感じるか」がすべてだったりします。
なので人生の意味は誰かに与えてもらうとか教えてもらうことで見つけるのではなく、どう自分なりの答えや価値観をつくっていくかがポイントということですね。
自分にとって価値のある目標に向かって努力できると、ウェルビーイング(幸福感)を高めることができるので、こちらもいくつか試してみるといいでしょう。
人生の意味(M)の高め方は次の3つです。
【人生の意味(M)の高め方】
- 方法①極端な感情を感じる体験をする
- 方法②自分なりの目的をもつ
- 方法③自分なりの価値観をもつ
順に紹介していきます。
方法①極端な感情を感じる体験をする

人生の意味を高める1つ目の方法は「極端な感情を感じる体験をする」です。
男女253人を対象にしたメルボルン大学などの研究で、対象者に対し過去1年間のあいだに自分に起きた最も衝撃的な出来事を思い出してもらいました。
すると面白いことに、自分の感情を激しく動かされるような体験は、人生の意味を深めたとの結果が出ました(R)。

その体験というのは、「転職先でパートナーを見つけて結婚した」とか、「勤めていた会社が突然倒産して退職した」とか、内容がポジティブかどうかは関係なく上がったとのこと。
なので感情の大きなアップダウンの体験というのは、僕らの人生の意味を深めるうえでキーとなるものだといえます。
思い切って新しい仕事に挑戦してみるとか、海でダイビングしてみるとか、自分が極端な感情を感じられるような体験ができるならしてみるといいですね。
今後自分の感情が強くかきたてられるような体験をしたときは、「自分はいま人生の意味が深まっているんだ!」と思っておくとメンタル的にもいいかもしれません。
方法②自分なりの目的をもつ

人生の意味を高める2つ目の方法は「自分なりの目的をもつ」です。
いくつかの研究を見てみると、人生の意味を感じている人は共通して自分なりの目的をもっていることが明らかになっています。
例えば、多くの人を対象に「どんな時に人生の意味を感じますか?」と尋ねたロイ・バウマイスターの研究(R)では、
- 人生の意味を感じている人の大半がなんらかの目的をもっていた
ということがわかっていますし、
610人の男女を対象に「どんな状況で人生の意味を感じますか?」と尋ねたイギリスの調査(R)でも、
- 人生の意味を構成する要素のなかでは、最も目的をもつことが大事である
と結論づけています。
つまり自分なりのゴールを持っている人は、どんな目標でも人生の意味が上がるということですね。
具体的には「いつか会社勤務ではなくフリーランスで自由に働く」とか、「いつも定時で帰ったあとは家族と過ごす」などがそうで、
自分にとって大事にしている目標に向かって努力しているという感覚が、僕らの人生の意味を高めていきます。
これは「毎日楽しく仕事する」など抽象的なものでも効果を発揮するので、まだ目的をもっていない方は1つ作ってみてはどうでしょうか。
方法③自分なりの価値観をもつ

人生の意味を高める3つ目の方法は「自分なりの価値観をもつ」です。
多様性の時代といわれる現代では、実にさまざまな価値観が生まれています。
そのため未来に対してはっきりしたビジョンが見えず、「本当にこれでいいのかな…?」と迷いが生じている方も多いでしょう。
価値観は人生のコンパスのようなもので、自分にとっての価値観があいまいだと、方向性が定まらず、不安やストレスが大きくなり、思い悩みやすくなるという問題がでてきたりします。
これを解消するのがミシシッピ大学のケリー・ウィルソン氏が開発した「価値評定スケール」です。
この「価値評定スケール」は、自分なりの価値観を明確にするうえで役に立つツールです。
具体的には、あなたが自分のキャリア・仕事について、どのように行動したいかを1~2行の短い文章に書きこむというものです。
例えば、「自分の得意なことを活かして、困っている人を手助けしたい」などがそうですね。
なかなか思いつかないという方は、次のように質問してみると自分なりの価値観が出てきやすくなります。(参考:鈴木裕『最高の体調』)
- 自分は仕事のどういった点に重きを置いているだろうか?
- 仕事をもっと意味あるものにするにはどうすればいいか?
- いまの暮らしが理想の状態だったとしたら、自分のどのような資質を仕事に活かしたいか?
- 職場や仕事のパートナーとどのような関係を築きたいか?
自分なりの価値観を明確にすれば、方向性を一つに変換できます。
方向性が一つになれば、現在と未来が一貫するので自分の人生を意味付けしやすくなります。
注意:目標と価値観の違いに気を付ける
「価値評定スケール」を使うにあたって注意したいのは、目標と価値観を混合してしまわないようにするということです。
簡単にまとめると、目標と価値観には次のような違いがあります。
- 目標:今後自分が達成したいゴールのこと(「今よりも良い条件の会社に転職する」、「起業する」など)
- 価値観:自分はどうありたいかという状態のこと(「いろんな業種の人と繋がる」、「新しい知識を学ぶ」など)
つまり、目標が結果を求めるのに対して、価値観はプロセスに焦点をあてたものになります。
例えば、スキルアップのため資格を取得したいという目標を立てたとします。
これだけだと、「合格する」「落ちる」の2つの未来が生まれ、人は不安を感じやすくなります。

資格取得を目指したことのある方は、一度は似たような経験をしたのではないでしょうか。
しかし、資格を取得するという目標の向こうに「周りを助けたい」「成長したい」などの自分なりの価値観もいれてみると、捉え方が変わります。
捉え方が変われば、いまやっている資格勉強が
・誰かの役に立つ情報の一つを学べた
・今日も自分のスキルが上がった
などと考えられるようになり、自分の未来の方向性を一直線にすることができます。

方向性が一つになれば、将来への不安も減り、人生に意味を見出しやすくなります。
特に長期的な目標をもっている人ほど価値観をもつメリットは大きくなるので、ぜひ実践してみてください。
まとめ:人生の意味は自分で見出せる

人生の意味の高め方についてまとめると次のようになります。
【人生の意味(M)の高め方】
- 方法①極端な感情を感じる体験をする
- 方法②自分なりの目的をもつ
- 方法③自分なりの価値観をもつ
そもそも人生には意味はありません。
人生の意味はとても主観的なものなので、人によって全然違うものになります。
ただ人生の意味を見出している人の多くに共通しているのは、「自分なりの目的や価値観をもっている」という点です。
変化の激しい現代では、先行き見えない未来に不安を感じている方は多いと思います。
ですがそんな目まぐるしい時代でも、自分なりの軸をもっている人は方向性をもって行動できるので、幸せになりやすいということですね。
まだオリジナルな目標や価値観がない方は、かんたんでいいので何かつくってみてはどうでしょうか。
人生の意味を高めることができ、結果的に幸福度アップにつながるのでおすすめです。
さて、次回は幸せを決めるPERMAのラストにあたる「達成(A)」について解説します。
「達成(A)」では大きな目標に向かって努力するより、階段を上るように小さな目標をたくさん作ると達成感を感じやすくなります。
こちらも幸せを決める要素の一つとして重要なポイントになるので、あわせて見ておくと効果的です。
【参考文献・データ等】
・マーティン・セリグマン『ポジティブ心理学の挑戦 “幸福”から“持続的幸福”へ』
・キャロライン・アダムス・ミラー『実践版GRIT やり抜く力を手に入れる』
・Sean Christopher Murphy,Brock Bastian(2019)Emotionally extreme life experiences are more meaningful.
・Baumeister, Roy F. Vohs, Kathleen D.(2002)The pursuit of meaningfulness in life.
・鈴木裕『最高の体調』
【記事執筆】あすか
【Twitter】:https://twitter.com/askalabo