個人でできるウェルビーイングを高める方法④~人生の意味編~
幸せを決める6つの要素の続き(イントロ編、1ポジティブ感情編、2集中力編、3人間関係編)です。
ポジティブ心理学では、人の幸せは次の方式で成り立つとしてます。
- 幸せ=(①ポジティブ感情+②集中力+③人間関係+④人生の意味+⑤達成感)―⑥ネガティブ感情
①~⑤は足し算。
なのでできるだけ大きくする。
でもネガティブ感情は引き算。
これはできるだけ小さくするのが大事ってことですね。
今回は、幸せを決める4つ目の要素「人生の意味」のステップにうつります。
「人生の意味」というとかなり大きな話に聞こえた方もいるかもしれません。
でもそれは「自分の得意分野を活かそう」とかでOKです。
小さくてもいいので、自分なりの人生の意味をもつことが大事。
なぜなら、人生の意味を持っている人は、
- 周りから認められなくても精力的に活動できる
- ストレスへの耐性がハンパなく強くなる
- 辛い状態が続いてても乗り越えられる
- 自己満足度が大幅に向上する
- 毎日の行動が自分のゴールに近づいている感覚が手に入る
などのメリットがあるから。
これは人生の早い段階でもっている人ほど人生の意味を見出すメリットは大きくなります。
逆に、人生の後半になっても見つけられない人は不幸になります。
ただ、年齢を重ねてからでも全然遅すぎることはありません。
いまからでも自分の人生の意味を見出す価値は十分にあります。
そこで今回は、あなただけの「人生の意味」の見出し方について解説します。
人生の意味の見出し方
人生の意味の見出し方は次の3つです。
【人生の意味の見出し方】
- 方法1)極端な感情を感じる体験をする
- 方法2)自分なりの目的をもつ
- 方法3)自分なりの価値観をもつ
そもそも「人生の意味」って自分の主観的なもの。
誰かに与えてもらうとか教えてもらうことで見つかるものではありません。
- 自分が何を感じるか?
- どう自分なりの答えや価値観をつくっていくか?
がポイントなります。
だから「公務員になりなさい」とか「フリーランスはやめたほうがいいよ」とか周りの声は無視しちゃって全然OK。
それよりも自分にとって価値のある目標を持つほうが何百倍も大事。
自分なりの意味を見つけて努力できると、人は初めてウェルビーイング(幸せ感)を高められます。
これから紹介する3つの方法のなかで、あなたがやりやすいものを1つ試してみてください。
人生の意味の見出し方1)極端な感情を感じる体験をする
面白いことに、人は自分の感情を激しく動かされると人生の意味を見出します。
メルボルン大学の実験です。
研究チームは、男女253人を対象に、
- 「過去1年間のあいだに、自分に起きた衝撃的な出来事はなんですか?」
と質問しました。
すると、
- 自分の感情が激しくアップダウンした人の方が、人生の意味を深めていた
との結果が出ました。(R)
その体験というのは、
- 転職先でパートナーを見つけて結婚した
- 勤めていた会社が突然倒産して退職した
など、内容がポジティブとかネガティブとか関係なく上がったとのこと。
つまり、感情の大きな揺れ動きっていうのは、私たちの人生の意味を深めるうえでキーとなるといえるんですね。
たしかに筆者も振り返ってみれば、
- これまで会社に多くの実績を残したのに、たった1回会社の車をぶつけただけで評価を下げられた&ボーナスから8万円修理代を減額された…
という経験をきっかけに、個人の努力次第で評価される今のライターの道を選んだんですよね。
なので感情の大きなアップダウンっていうのは、人生の意味を見出す上で重要だったかなと…。
もしあなたがまだ自分の人生の意味を見出していないのであれば、
- 思い切って今の会社を辞めて別の会社で働いてみる
- 休日に海でダイビングしてみる
- 起業する
- 将来のパートナーを見つけるためにいろんな人とデートしまくる
とか、自分が極端な感情がもてるような体験をしてみるといいですね。
逆に自分の感情が強くかきたられるような体験(ネガティブな出来事であっても)が起きたら、
- 自分はいま人生の意味が深まっているんだ!
と思っておくとメンタル的にもいいかもしれません。
人生の意味の見出し方2)自分なりの目的をもつ
人生の意味を感じている人は共通して自分なりの目的をもっています。
実際、
「どんな時に人生の意味を感じますか?」
と尋ねたロイ・バウマイスターの研究では、
- 人生の意味を感じている人の大半がなんらかの目的をもっていた(R)
と分かっています。
また、610人の男女を対象に
「どんな状況で人生の意味を感じますか?」
と尋ねたイギリスの調査でも、
- 人生の意味を構成する要素のなかでは、目的をもつことが最も大事である(R)
と結論付けてます。
つまり自分なりのゴールを持っている人は、どんな目標でも人生の意味が上がるということですね。
具体的には、
- いつか会社に頼らず個人の力だけで自由に働く
- 自分が作った作品をSNSを使って多くの人に届ける
- 1年以内に英語の文章がスラスラ読めるようになる
- 家賃収入で不労所得をつくって学生の時に行けなかった芸大に行く
などあなただけの目的をつくります。
この
- 自分にとって大事にしている目標に向かって努力している
という感覚が、私たちの人生の意味を高めていきます。
「そうはいってもなかなか思いつかないな」という方は
- 毎日楽しく仕事する
- パートナーを見つける
- 病気にかからず健康でいる
みたいに抽象的な目的であっても効果を発揮します。
もしまだ目的をもっていないなら、大まかなものでも何でもいいので1つ人生の目的をつくってみてください。
それだけで人生の満足度とか幸福度をアップできますよ。
人生の意味の見出し方3)自分なりの価値観をもつ
いまの時代とくに重要になってくるのが「自分なりの価値観をもつ」です。
なぜなら多様性の時代でいろんな価値観が生まれているから。
学校を卒業したら就職した会社に定年まで勤めるなんてもう時代遅れ。
「公務員になったら幸せ」もそう。
価値観はどんどん変化してます。
なので未来に対してはっきりしたビジョンが見えず、
「本当にこれでいいのかな…?」
と迷ってる方も多いでしょう。
価値観は例えると人生のコンパスのようなものです。
コンパスがはっきり方向を指してくれたら迷わないですよね。
でも、自分の価値観のコンパスがカタカタ揺れ動いてたら、
- 方向性が定まらない
- 不安やストレスが大きくなる
- 思い悩みやすくなる
という問題がでてきたりします。
その状態ってめっちゃキツイですよね。
なので自分なりの価値観をもつのが大事になります。
こういうと、じゃあどうすれば持てるの?という方もいると思うので、「価値評価スケール」という方法を紹介します。
「価値評価スケール」は、自分なりの価値観を明確にするときに役に立つツールをいいます。
具体的には、
- あなたが自分の人生で、どのように行動したいかを1~2行の短い文章に書きこむ
ということをします。
例えば、
- 「自分の得意なことを活かして、困っている人を手助けしたい」
などがそうですね。
なかなか思いつかないという方は、次のように質問してみると自分なりの価値観が出てきやすくなります。(R)
- 自分は仕事で何を大事にしているか?
- 仕事をもっと意味あるものにするにはどうすればいいか?
- 自分がもっと知りたいことは何か?
- 手に入れたい新しいスキルは何か?
- 恋愛・結婚でパートナーとどんな関係をつくりたいか?
- 自分がリラックスできるのはどんな時か?
- どんなときに一番楽しい気分になるか?
- 自分の居場所をどのように作りたいか?
- どんな親になりたいか?
- 自分が相手にとって最高の友人だとしたら、どのようにふるまうか?
参考までに筆者の場合は、
「専門書や論文の知識を、多くの人にわかりやすく届ける通訳者でありたい」
というのが価値観です。
自分なりの価値観を明確にすれば、方向性が一つに決まります。
方向性が一つになれば、現在と未来が一貫するので自分の人生を意味付けしやすくなります。
注意:目標と価値観の違いに気を付ける
あなたは目標と価値観の違いを説明できますか?
「価値評定スケール」を使うにあたって注意したいのは、
- 目標と価値観を混合してしまわないようにする
ということです。
簡単にまとめると、目標と価値観には次のような違いがあります。
- 目標:今後自分が達成したいゴールのこと(「今よりも良い条件の会社に転職する」、「起業する」など)
- 価値観:自分はどうありたいかという状態のこと(「いろんな業種の人と繋がる」、「新しい知識を学ぶ」など)
つまり、目標が結果を求めるのに対して、価値観はプロセスに焦点をあてたものになります。
例えば、スキルアップのため資格を取得したいという目標を立てたとします。
これだけだと、「合格する」「落ちる」の2つの未来が生まれ、人は不安を感じやすくなります。
資格取得を目指したことのある方は、一度は似たような経験をしたのではないでしょうか。
しかし、資格を取得するという目標の向こうに
- 「周りを助けたい」
- 「学んで成長したい」
などの自分なりの価値観もいれてみるとどうでしょうか。
捉え方がガラッと変わります。
つまりいまやっている資格勉強が
- 誰かの役に立つ情報の一つを学べた
- 今日も自分のスキルが上がった
などと考えられるようになるんです。
自分の未来の方向性を一直線にできます。
図解にするとこんな感じ↓
方向性が一つになれば、将来への不安も減り、人生に意味を見出しやすくなります。
特に長期的な目標をもっている人ほど価値観をもつメリットは大きくなります。
ぜひ試してみてください。
人生の意味を見出すと健康寿命が延びる?
最後に、人生の意味を見出すと健康寿命が延びるというちょっと変わった研究を紹介して終りにしたいなと思います。
ミシガン大学の研究です。
50歳以上の男女6,985人を対象に、「人生の意味」と健康の関係について調べました。
具体的には
「あなたにとって日々の活動は重要だと感じますか?」
みたいに、人生の意味に関する質問をいくつか行います。
それらを6点満点でそれぞれ自己採点します。
採点から5年経って、もう一度調査をしてみると次のような結果になりました。
なんと、
- 人生の意味スコアが平均5点以上のグループは、最も低かったグループよりも約2倍生存率が高かった(R)
との結果が出たのです!
つまり人生の意味を見出している人ほど寿命が高かった。
これは驚きですね。
理由はまだはっきり分かってはいませんが、おそらく自分なりの人生の意味をもっていると、日々の生活にストレスを感じなくなるからだと思います。
「自分は何のために生きてるんだろう?」と無駄に落ち込むこともなさそうですし。
そう考えると、人生の意味を見出すのってあんまり軽視できないですよね。
人生の意味スコアが6点満点中平均5点以上はなかなか高い気がしますけど、でも今回紹介した3つの方法をやれば高められます。
自分の健康寿命を延ばすためにも、ぜひ人生の意味を高めてみてください。
人生の意味の見出し方まとめ
幸せを決める4つ目の要素「人生の意味の見出し方」のまとめです。
【人生の意味の見出し方】
- 方法1)極端な感情を感じる体験をする
- 方法2)自分なりの目的をもつ
- 方法3)自分なりの価値観をもつ
※目標と価値の違いに注意。目標は結果を求めるのに対して、価値観はプロセスに焦点をあてたもの。
- 人生の意味を見出すとそうでない人より健康寿命の差が2倍も延びる。
そもそも人生には意味なんてありません。
理由は人生の意味はとても主観的なものだから。
なので人によって全然違んです。
ただ人生の意味を見出している人の多くに共通しているのは、「自分なりの目的や価値観をもっている」という点です。
変化の激しい現代では、先行き見えない未来に不安を感じている方は多いと思います。
ですがそんな目まぐるしい時代でも、自分なりの軸をもっている人は方向性をもって行動できるので、幸せになりやすい傾向にあります。
まだ自分だけの目的とか価値観がない人は、かんたんでいいので何か1つ見つけてみてはどうでしょうか。
今回紹介した方法を使えば、自分なりの人生の意味を見出すことができます。
人生の意味を高めたら、結果的に幸福度アップにつながるのでおすすめです。
さて次回は、幸せを決める5つ目の要素「達成感」の高め方に移ります。
「達成」では大きな目標に向かって努力するより、階段を上るように小さな目標をたくさん作ると達成感を感じやすくなります。
こちらも幸せを決める要素の一つとして重要なポイントになるので、あわせて見ておくと効果的です。
(次回)
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【参考文献・データ等】
- マーティン・セリグマン『ポジティブ心理学の挑戦 “幸福”から“持続的幸福”へ』
- 鈴木裕『最高の体調』
- Vlad Costin, Vivian L Vignoles(2022)What do people find most meaningful? How representations of the self and the world provide meaning in life.
- Aliya Alimujiang, Ashley Wiensch, Jonathan Boss,et al(2019)Association Between Life Purpose and Mortality Among US Adults Older Than 50 Years.
- Sean Christopher Murphy,Brock Bastian(2019)Emotionally extreme life experiences are more meaningful.
- Baumeister, Roy F. Vohs, Kathleen D.(2002)The pursuit of meaningfulness in life.
【記事執筆】あすか
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