【労働時間の新常識】「残業」しても仕事が終わらない理由

仕事

労働時間の新常識をデータ解説!

どうしてたくさん残業しても私たちの仕事は終わらないんですか?

労働時間が長くなればなるほどパフォーマンスが落ちるからです。

「仕事がたくさんあるから残業して終わらせよう」ではなく、「無駄な業務を減らそう」という引き算で考えることが大切です。

なぜ残業しても仕事が終わらないのか

出典元:PAKUTASO

 毎日残業しても仕事が片付かない理由について、「労働時間の長さ」と「生産性」の関係に関するデータを元に解説していきます。

 あなたは今夜も遅くまで残業しようと考えていませんか?

 中には家に持ち帰って深夜まで仕事をしてしまう人もいるかもしれません。

 やっと仕事が終わり、深夜ベッドに横になることができても、明日の仕事のことで頭がいっぱいで、夜も寝付けず、朝起きるのが辛い。

出典元:PAKUTASO

 「また明日も遅くまで残業して、家に持ち帰ってしまうのかな…」と考えてしまう。

 そんな日々を送った経験がある人もいると思います。

 多くの人が遅くまで残業してしまう根本的な理由は、特に私たち日本人がしがちな労働時間に対する考え方にあります。

「労働時間の長さ」=「成果」ではない

出典元:PAKUTASO

 私たちは感覚的に、かけた時間の分だけ成果が上がると思っています。

 しかし、実際にはそれは逆で、基本的に労働時間は長くなればなるほど、私たちの能力、パフォーマンスが下がっていくことがデータで証明されています。(データで読む産業保健「労働時間と労働生産性」)

 「労働時間の長さ」=「成果」ではないのです。

 そのため、1日6時間労働している人と、12時間労働している人の成果は、単純に2倍ではないということになります。むしろ長時間労働すればするほど生産性は落ちていきます。

 実際に「労働生産性」について国際比較をしてみると、労働時間が短い国ほど高い成果を出していることが分かります。

データで読む産業保健第9回「労働時間と労働生産性

 日本は労働時間が長いために、「労働生産性」がかなり世界と比べて低いです。

 「労働政策研究・研修機構(JILPT)」が調べたデータによると、日本の労働時間は、年間平均1,598時間となっています。(労働政策研究・研修機構

 これは、イタリア(1,559 時間)、スウェーデン(1,424 時間)、フランス (1,402 時間)、イギリス(1,367 時間)、ドイツ (1,332 時間)などよりも長い労働時間です。

労働政策研究・研修機構「データブック国際比較 ⼀⼈当たり平均年間総実労働時間(就業者)

 東大医学部島津准教授によれば、人間の脳が集中力を発揮できるのは朝目覚めてから13時間以内で、それを超えると集中力がどんどん下がっていくと述べています。

 つまり残業するほど集中力が下がるので、長時間労働はコスパが悪いです。

 むしろ深夜まで残業するよりも、睡眠をしっかり取って仕事したほうがコスパは高いです。(参考:“仕事効率を上げる!” 睡眠時間を確保する7つの方法

「労働生産性」を高める

出典元:O-DAN

 「同じ労働時間でどれだけの成果を上げれるのか」といった考え方を「労働生産性」といいます。

 つまり、「労働生産性」が高い人ほど、短い時間で成果を上げることができる人ということになります。

 例えば、営業部のAさんとBさんが1日でどれだけ契約を締結できたかを比べたとします。

 Aさんは1日で1件契約を結ぶことができ、Bさんは1日で契約を5件締結できたとします。

 このとき、1日5件の契約を獲得することができたBさんは、1日1件の契約を締結したAさんよりも5倍の「労働生産性」があるということになります。

 労働生産性を上げるためには、「労働時間の長さ」=「成果」ではなく、「労働時間」=「生産性の高さ」という考え方に変えていくことが大切です。

「足し算」思考から「引き算」思考へ

出典元:PAKUTASO

 つい私たちは、物事を足し算的に考えてしまいがちです。

 実際に現代人は物事を引き算で考えるのが苦手だということがバージニア大学の研究で分かっています。(英科学誌「ネイチャー」)

 例えば、日本の政策では労働人口を確保するため、数年間技能実習生などの外国人労働者を積極的に雇うという「足し算」で解決しようとしています。

 ですが、それでは根本的な解決にはなりません。

出典元:O-DAN

 大量の外国人を雇うということをすると、一人当たりの労働価値が相対的に下がり、日本の労働者の給料も低く抑えられてしまいます。

 結果、優秀な日本人がどんどん海外に逃げてしまい、かえって日本の労働人口が減少してしまうからです。

 実際、2022年10月1日の時点で、海外に永住を決めた日本人は約55万7000人もいます。(「海外在留邦人数調査統計」)

 これだと更に能力のある人手が不足してしまうという結果になりかねません。

 今後も日本の労働人口は年々減り続けています。

厚生労働省『厚生労働白書 ―令和時代の社会保障と働き方を考える―

 2040年には、現在より約800万人の労働者が減っていく見込みです。(『厚生労働白書』)

 特に日本のような人口減少社会では、業務量が増えたから「人手を増やそう」という「足し算思考」から、「無駄な業務は何があるのか」という「引き算思考」で考えていく必要があります。

大切な人との時間を過ごすために

出典元:O-DAN

 少ない労力で高いパフォーマンスを発揮することができるようになれば、

・家族と過ごす時間

・夫婦と過ごす時間

・友達と過ごす時間

・自分の時間

 などが生まれ、自分が大事にしたい時間を増やすことができます

 仕事のためにプライベートな時間を犠牲にしなくてすむようになります。

 残業時間を減らすためには、まずは労働時間の根本の考え方から、変えていくことが必要です。

 それが最終的に、大切な人と過ごす時間や自分の時間などに繋がっていきます。

出典元:O-DAN

 具体的に労働時間を減らす方法については、「「過重労働」を防止する9つの方法」を参考にしてみてください。

【参考文献・データ等】

英科学誌「ネイチャー」バージニア大学Gabrielle S. Adamsらの研究

データで読む産業保健第9回「労働時間と労働生産性

労働政策研究・研修機構「データブック国際比較 ⼀⼈当たり平均年間総実労働時間(就業者)

外務省「海外在留邦人数調査統計

厚生労働省『厚生労働白書 ―令和時代の社会保障と働き方を考える―

TOMA社会保険労務士法人『会社の“本気”を後押しする過重労働防止の実務対応』

(↓長時間の残業をなくすための解決策を学べる実務書)

タイトルとURLをコピーしました