正解の見えない問題を解決する方法~幅広い知識をもつと超有能になれる理由~
今回は、正解の見えない難しい問題を名探偵コナンのように解決する方法について解説します。
私たちは日々、答えの見えない問題にぶつかりながら生きています。
新しい問題にぶち当たった時、私たちはいったいどうすればいいのか。
結論からいうと、
- 「幅広い知識をもっておく」
と最強です。
というのも、人は何か1つの問題にぶつかると、その分野の知識で解決しようとしがちだからです。
たとえば、法律に詳しい人は、法律の知識だけを使って新たに出てきた問題を解決しようとします。
ただ、それだけだと法律の枠の中におさまらずにはみ出てしまった部分をカバーできません。
未経験の問題を解決するには、専門知識以外の知識からもヒントを探す必要があります。
といっても、あまりピンとこないかと思いますので、具体的に幅広い知識が問題解決につながる例をこれから一緒に体験してみましょう。
1930年代に、カル・ドゥンカーが問題解決の授業で行った「健康な細胞を傷つけずに腫瘍を破壊するには?」という問題です。
チャレンジ問題!細胞を傷つけずに腫瘍を破壊せよ
幅広い知識が問題解決になる例で有名なのが「ドゥンカーの放射線問題」です。(R)
正解率10%のかなりの難問ですが、まずはヒントなしでぜひチャレンジしてみてください。
Q 健康な細胞を傷つけずに腫瘍を破壊せよ
- あなたは医者で、あなたの患者の胃には悪性の腫瘍が残っている。
- 手術はできないが、腫瘍を退治しないと患者は死亡してしまう。
- 1つ可能性があるのは、その腫瘍を破壊できる特殊な放射線である。
- もし、放射線が十分な強さで腫瘍に当てることができたら、その腫瘍を破壊できる。
- だがその強さだと、腫瘍に当たるまでに放射線に触れた健康な細胞も破壊してしまう。
- 逆に放射線の強さが足りないと、健康な細胞は守れても腫瘍は壊すことができない。
- 腫瘍を放射線で破壊し、同時に健康な細胞の破壊を避けるためには、どんな方法を使えばいいか。
- ただし、放射線は強すぎるか、弱すぎるかのいずれしか選択できない。
大半の方は「この問題難しいな…」と感じるはずです。
ですが、これから紹介する2つのストーリーをヒントにすると、正解率が約8倍に上がります!
この問題が解けるようになるストーリーとはどのようなものでしょうか。
放射線問題の解決のヒントとなる2つのストーリーを見てみましょう。
ヒント①「独裁者の要塞を奪った将軍の話」
問題解決のヒントとなるストーリー1つ目は、「独裁者の要塞を奪った将軍の話」です。
「独裁者の要塞を奪った将軍の話」
- 昔、ある国の将軍が、残忍な独裁者から中心部に位置する要塞を奪おうとしていた。
- すべての兵士をその要塞に同時に到着させることができれば、問題なくその要塞を奪える。
- 要塞までは一本道ではなく、多くの道が要塞の中心から放射状にのびていた。
- しかし、道には地雷がばらまかれていたので、少人数のグループでなければ、どの道であっても上手く進めそうになかった。
- そこで将軍はある計画を思いつく。
- 「兵士を少人数のグループに分け、各グループが別々の道をとおって同時に要塞に着くよう時間を合わせよう」
- 計画はうまくいった。将軍は無事要塞を占拠し、独裁者を追放できたのだ。
このストーリーを読んで、「将軍の話が医療となんの役に立つの?」と思った方もいるかもしれません。
ですが、この知識を応用すれば、あなたが担当している患者を助ける可能性が上がります。
放射線問題と将軍のストーリーでは何が共通しているのか少し考えてみてください。
「もう1つヒントが欲しい!」と思った方は、次のストーリーも参考にしてOKです。
ヒント②「薪小屋を鎮火させた消防署長の話」
問題解決のヒントとなるストーリー2つ目は、「薪小屋を鎮火させた消防署長の話」です。
「薪小屋を鎮火させた消防署長の話」
- 小さな町の消防署長が薪小屋の火災の現場に到着した。
- 早く消し止めなければ、近くの家にも火が燃え広がってしまう。
- 近くに消火栓はなかったが、幸いにも薪小屋は湖のすぐ近くにあったので、水はたくさんあった。
- すでに、近所の人たちが何十人も集まって、バケツリレーで水を汲んでは順に小屋に水をかけていた。
- しかし、効果は全くなかった。
- ここで消防署長は驚くべき行動を取った。みんなに水をかけるのをやめさせたのだ。
- そして、全員を湖に行かせてバケツで水を汲ませ、全員が戻ってくると小屋を取り囲むように並ばせた。
- そして、「1、2の3!」の合図で、全員が同時に水をかけた。
- 火はすぐ弱まり、やがて鎮火した。
この消防署長のストーリーも、放射線問題や将軍の話と共通点があります。
「3つのストーリーに共通してるのは何だろうか?」と一度考えてみてください。
もちろん答えがわからなかったとしても何も気にしなくてOKです。
重要なのは、かけ離れた知識がまったく別の分野で実は役に立てる点です。
では、チャレンジ問題の答えを見ていきましょう。
チャレンジ問題の答え
チャレンジ問題「健康な細胞を傷つけずに腫瘍を破壊せよ」の答えです。
正解は、
- 「複数の弱い光線をさまざまな方向から当てて腫瘍を破壊する」
です。
2つのストーリーは、以下の点をヒントで示していました。
- 将軍が兵士たちを小さなグループに分散させて、最後に要塞で全員を合流させた。(➡ヒント①)
- 消防署長が近所の人たちを薪小屋の周囲に並ばせて、そのバケツの水が燃えている薪小屋で一斉に集まるようにした。(➡ヒント②)
これらのヒントから
- 方法:ある目的を達成するために大きな力が必要。
- 課題:その大きな力を直接かけることができない。
- 解決:さまざまな方向から同時に小さな力をかけて大きな力にする。
といった共通点を見つけられるかが問題解決のキーとなります。
ドゥンカーの放射線問題を解ける人はわずか10%程度です。
ですが、要塞の話(ヒント①)も聞くと約30%が正解し、さらに消防署長の話(ヒント②)を聞くと約50%が正解します。
さらにこの2つのストーリーを応用すれば問題が解けると伝えると、約80%の人が患者を救うことができました。
医学の問題だから、必ずしも医学の知識で解決するのがいいいとは限りません。
専門分野の知識で考えるよりも、他の分野の知識を応用して使うことが問題解決のヒントになるのは意外ですよね。
まとめ:問題解決で重要なのは幅広い知識
正解の見えない問題を解決する方法まとめです。
【問題を解決する方法まとめ】
- 正解の見えない問題について、1つの専門知識だけでは解決できる可能性は低い。
- ただし、ジャンルは異なっても似たような問題を解決した事例を1つか2つ知っていると、解決できる可能性が上がる。
- 実際、ドゥンカーの放射線問題を解ける人は10%程度だが、要塞の話や消防署長の例をヒントにできると伝えると約80%が正解する。
- 未経験の問題を解決するために必要なのは幅広い知識。
繰り返しますが、この問題が解けなかったとしても気にしなくて構いません。
重要なのは、
- 幅広い知識をもっておくと問題解決できる可能性が高まる
という点です。
私たちはたとえ全く違う分野であったとしても、何か似たような事例が1つか2つ知っているだけで解決できる可能性がぐんと上がります。
そのためには、専門分野以外の知識もあわせてもっておくのが大事だといえますね。
もしあなたが問題解決能力を高めたいなら、いま自分が専門にしている知識とはまったく別の知識も幅広くもっておくと便利です。
たまには普段読まないようなジャンルの本とか手に取ってみて、知識としてもっておくといつか役に立つかもしれません。
幅広い知識をもつことの重要性については、デイビッド・エプスタインの『RANGE(レンジ)知識の「幅」が最強の武器になる』がお勧めです。
あのビルゲイツも絶賛した本で、世界的に読まれています。
変化が目まぐるしく複雑な現代では、専門特化だけよりもいろんな知識や経験をした幅のある人が問題解決能力が高いことを明らかにした本です。
知識の幅を広げたらどんなメリットがあるのかもっと知りたい方はぜひ読んでみてください。
問題解決に関するよくある質問
逆に幅広い知識をもつより、同じ分野の知識を極めたほうがいい時もあるのだろうか?
基本的には幅広い知識を持つのが有効ですが、チェスとか、数学とか、ルールが限定されている場合は1つに特化した方がいいですね。
過去の経験をダイレクトに活かせるので、その場合はスキル特化に集中してもOKですよ。
【参考文献・データ等】
- デイビッド・エプスタイン『RANGE(レンジ)知識の「幅」が最強の武器になる』
- アン・ウーキョン『イェール大学集中講義思考の穴──わかっていても間違える全人類のための思考法』
- MARY L. GICK AND KEITH J. HOLYOAK(1983)Schema Induction and Analogical Transfer.COGNITIVE PSYCHOLOGY 15, l-38
【記事執筆】あすか
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