ジョブクラフティングのやり方~今の仕事を「好き」に変える4ステップ解説~
今回は、いまの仕事を好きに変えるジョブクラフティングのやり方について解説します。
あなたは普段仕事をしていて「早く家に帰りたいなぁ…」「この仕事面白くないなぁ…」と日々感じていませんか?
もしあなたが、
- 物を運ぶような単純作業の多い仕事
- 事務職のようにずっとパソコンに向き合うような仕事
- コールセンターのようなマニュアルが決まった仕事
といったルーチンワークが多く、変化のない仕事であれば、なかなかやりがいを見出すのは難しいですよね。
でも、だからといって転職したいほどではない。正直すぐに転職するほどの勇気はない。
それなら、今の仕事で満足する方法を探すしかありません。
そこでオススメなのが「ジョブクラフティング」と呼ばれる手法です。
ジョブクラフティングを使えば、
- 仕事のモチベーションを高める
- 今の仕事を「好き」に変えられる
- 自分の価値観、やりがいが明確になる
などの効果が出ると研究で明らかになってます。(R)
たいていの仕事は、やりがいを感じれば続けられます。
ジョブクラフティングは時間がかかりますが、その分効果は大きくなります。
ジョブクラフティングのやり方については鈴木裕の『4021の研究データが導き出す 科学的な適職』がお勧めです。
本記事は初めてやる人に向けて書いた記事なので使いやすいよう要点をまとめましたが、さらにがっつりやりたい方は手にとって読んでみてください。
ではここから具体的に、仕事のやりがいを作り出すジョブクラフティングのやり方4ステップついて解説します。
ジョブクラフティングとは?
ジョブクラフティングとは簡単にいうと
- 自分の仕事を価値観にもとづいてとらえ直すこと
をいいます。
実際、約3万人を対象にしたメタ分析でも、相関係数は
- 前向きな行動の増加:r=0.509
- 問題解決のための積極的な姿勢の増加:r=0.543
- 主体的に仕事に取り組む感情の増加:r=0.450
との結果が出ています。(R)
相関係数は1に近いほど効果があるのを意味するので、上記の数字は、
- ジョブクラフティングを使うとかなりの確率で仕事へのモチベーションが上がる
と考えてもらって構いません。
ジョブクラフティングは日々つまらないなと思うような仕事に、あらためて深い意味を見出すことができます。
たとえば、医療機器の製造で、あなたが1日ひたすらボトルをはめ込む作業をしていたとします。
この時、自分は何をしているのかとふと考えたときに
- ボトルをはめこんでいる
- お金を稼いでいる
- 部品を製造している
などが答えだと、今後も毎日つまらない思いをしながら仕事をすることになります。
しかしここで、
- 自分は人の命を救う手助けをしているんだ
と自分なりの価値観を見出すと、ボトルをはめる作業を「人助け」としてとらえ直すことができます。
例のように自分の仕事を価値観にもとづいてとらえ直せば、どんな職業でも深い意味を見出すことができます。
その方法が、ジョブクラフティングと呼ばれる手法です。
ジョブクラフティングのやり方4ステップ
では、具体的に自分の仕事にやりがいを見出すにはどうすればいいのでしょうか。
ここでは最も効果が高いとされるジョブクラフティングのやり方を紹介します。
まとめると、大きく次の4ステップです。
【ジョブクラフティングのやり方4ステップ】
- ステップ1:配分をスケッチする
- ステップ2:価値観をリストアップする
- ステップ3:価値観をあてはめる
- ステップ4:具体的な行動を決める
順に説明していきます。
ステップ1:配分をスケッチする
ジョブクラフティングのやり方1つ目のステップは「配分をスケッチする」です。
配分のスケッチでは、自分の日々の業務を書きだしていきます。
その後、それぞれの業務がどれくらいの時間つかっているのかをパーセンテージで書きます。
たとえば、
- 書類の作成(40%)
- メールや電話の応対(30%)
- プロジェクトの立ち上げ(20%)
- マニュアル作成(10%)
などと、合計100%になるように書いていきます。
また、その仕事に必要な時間とエネルギーが多いほどブロックのサイズが大きくなるように書いていきます。
普段自分がやっている仕事について、配分を理解している人はほとんどいません。
そのため実際にスケッチして視覚化してみると
- 思ったよりもメールや電話に時間をとられているな
- 意外に大事な仕事に時間を割いていなかったんだな
- 書類の作成で半分くらい使ってたんだな
などといった点に気付けます。
業務配分がアンバランスだと感じたときは、どういったところを改善する必要があるのか考えてみるとより効果的です。
ステップ2:価値観をリストアップする
ジョブクラフティングのやり方2つ目のステップは「価値観のリストアップ」です。
価値観のリストアップでは、
- 自分が仕事を通じてどういう価値観を達成したいのか
を考えます。
価値観では、
- 仕事を通じて自分はどんな強みを伸ばしたいのか?
- どういうふうに自分のモチベーションを高めたいのか?
- どういうふうに自分は情熱を注いでいきたいのか?
などを考えていきます。
というと、抽象的でなかなか思いつきにくいと思いますので、次のフレーズをヒントに自分なりの価値観を見つけてもらってもかまいません。
自分なりの価値観を見つけるヒント★
【動機について】
- 自由がほしい、成長したい、楽しくしたい、色んなことに挑戦したい、贅沢な暮らしをしたい、影響力を高めたい、人を助けたい、人を導きたい、新しいのを創りたい、有名になりたいなど
【強みについて】
- 判断力を高める、知識を広げる、企画力を上げる、効率的に仕事する、専門性を高める、学習力を上げる、忍耐力を鍛える、コミュニケーション能力をつける、集中力を上げる、問題解決力を高める、社交性を身につける、自己コントロール能力を高めるなど
たとえば、
- 好きな場所で、好きな時間に自由に働きたい。
- 自分の専門性を高めて、成長していきたい。
- 影響力を高めて、有名になりたい。
などと自分が思いつく限りの価値観をリストアップしていきます。
ステップ3:価値観を当てはめる
ジョブクラフティングのやり方3つ目のステップは「価値観をあてはめる」です。
最初にスケッチしたそれぞれの業務に対して、図のように自分が達成したい価値観をいれます。
【価値観をあてはめる(例)】
- 書類の作成:資料作成スキルがほしい。文章力が鍛えられる。
- メールや電話の応対:コミュニケーション能力がつく。説明能力が手に入る。
- プロジェクトの立ち上げ:新しいのを創りたい。色んなことに挑戦したい。
- マニュアル作成:業務を効率化する能力を手に入れたい。
- 電話の応対であれば、まったく内容を知らない人に対してわかりやすく説明する力がつく。説明能力がつくんだなと思えば、将来に活きるなと感じることができる。
- プロジェクトの立ち上げであれば、新しいアイデアを生み出す創造力がつくだろうなと考える。今後、自分たちの仕事はAIにどんどんとって代わられるだろうけど、創造力は今後も役に立つだろうなと考えられる。
この価値観をあてはめる作業は、人によって変わっていきます。
書類の作成でも、人によっては
- 情報を整理する
- わかりやすく伝える表現を考える
- オリジナルの図を作成する
などに焦点をあてたほうが、モチベーションが高まる場合もあります。
マニュアル作成でいえば、
- イラストを入れて見る人が楽しめるようにする
- 内容を再構築して創造欲を満たす
- 無駄な情報を削って効率性を求める
などが向いている場合もあります。
すべては自分で自由に彩ることができるので、自分なりに価値観をあてはめてみてください。
ステップ4:具体的な行動を決める
最後、ジョブクラフティングのやり方4つ目のステップは「具体的な行動を決める」です。
このステップは「アクション・プラン」ともいったりします。
配分を決めて、価値観をあてはめたら、今度はそれにもとづく行動を決めます。
現在の仕事にやりがいを感じることができるまでは、3つ目のステップまで終わればできます。
しかし将来的には、時代の流れでいまやっている仕事がどんどん変わります。
そのため、ここでは将来にもつなげていくためには何ができるかを考えていきます。
まずはジョブクラフティングの図を見ながら、あなたができそうなことを紙に書き出してみましょう。
でも抽象的で思いつくのってムズかしい…。
それなら、次に紹介する質問をヒントに書くのがオススメです。
【アクション・プランに役立つ質問】
- 次の1週間のあいだにできそうな行動はなんですか?(例)報告書の図や写真を作成するためAI生成ができるサービスを利用する。
- 次の1ヶ月のあいだにできそうな行動はなんですか?(例)部署ごとに異なる報告書のフォーマットを一つにそろえる。
- 行動するにあたり、具体的な困難や障害はどのようなものがあると思いますか?(例)改善に時間をかけすぎてしまって、書類作成に使う時間が減るかもしれない。
- 困難や障害を乗り越えるためには、どのような戦略が使えますか?(例)あらかじめジョブクラフティング用の割り当て時間のリミットを作っておく
これらの質問は、
- 従業員のモチベーションややりがいを高める
- 具体的な行動を決める
- 実行までの過程で発生しそうなトラブルを考える
などに役立ちます。
具体的な行動が思いつきにくいなと感じる方はぜひ使ってみてください。
アクション・プランは一時的な対策に思えるかもしれませんが、
- 報告書をわかりやすくまとめて文章力を鍛える。
- 効率的な方法を考えて実践する
- 創造力を発揮し、もっと職場全体が楽になるようなアイデアを考える。
などは、いまの仕事だけでなく「あなたの将来の仕事」にも必ずつながっていきます。
長期的に役立つ質問なので、ぜひ時間をかけてやってみてください。
ジョブクラフティングの成果を知るための質問
ステップ①からステップ④まで終わると、
- 「自分が立てたジョブクラフティングって上手くいってるのかな?」
と気になる方もいるかもしれません。
ですが嬉しいことに、ジョブクラフティングの成果が出ているかを数値化できる方法があります。
欧米で使われているテストを日本人用に開発した「日本語版ジョブクラフティング尺度」です。(R)
これを使えば「ジョブクラフティング」がどれだけ上手くいったかを正確に判断できるとの結果が出ています。(R)
定期的に自分で立てたアクションプランがやりがいにつながっているのかを確かめれば、修正が必要かどうかを知れます。
日本語版ジョブクラフティング尺度
最後に、そのとても心強いツールである「日本語版ジョブクラフティング尺度」を紹介します。
正確にはかるために、紙とペンを用意してください。
21問の質問で構成されています。
あなたの職場での過ごし方をふりかえってみて、よく当てはまるなら5点、まったく当てはまらないなら1点の5点満点で採点してみてください。
【日本語版ジョブクラフティング尺度】
- 1 私は、自分の能力を伸ばすようにしている。
- 2 私は、自分自身の専門性を高めようとしている。
- 3 私は、仕事で新しいことを学ぶようにしている。
- 4 私は、自分の能力を最大限に生かせるように心がけている。
- 5 私は、自分の仕事のやり方を自分自身で決めている。
- 6 私は、仕事で思考力が消耗しすぎないようにしている。
- 7 私は、自分の仕事で感情的に張りつめないように心がけている。
- 8 私は、自分の感情を乱すような問題を抱えている人との関わりをできるだけ減らすように自分の仕事に取り組んでいる。
- 9 私は、非現実的な要求をしてくる人とのかかわりをできるだけ減らすように自分の仕事を調整している。
- 10 私は、困難な決断をたくさんしなくてもいいように自分の仕事を調整している。
- 11 私は、一度に長時間にわたって集中しなくてもいいように自分の仕事を調整している。
- 12 私は、上司に自分を指導してくれるように求めている。
- 13 私は、上司が私の仕事に満足しているかどうか尋ねている。
- 14 私は、上司に仕事で触発される機会を求めている。
- 15 私は、仕事の成果に対するフィードバックを他者に求めている。
- 16 私は、同僚に助言を求めている。
- 17 面白そうな企画があるときには,積極的にプロジェクトメンバーとして立候補している。
- 18 仕事で新しい発展があれば,いち早くそれを調べ、自ら試している。
- 19 今の仕事であまりやることがないときは,新しいプロジェクトを始めるチャンスととらえている。
- 20 私は、金銭的な報酬が追加されなくても、自分に課された以上の仕事を率先してこなしている。
- 21 私は、職務の様々な側面のつながりをよく考えながら、自分の仕事がさらに挑戦しがいのあるようにしている。
採点がおわったら、次の4つのグループの平均スコアを出します。
それぞれのグループのスコアは、次のような要素を表しています。
- 1~5の平均スコア=自分の能力やスキルを高め、活かそうとしているか。
- 6~11の平均スコア=ネガティブな状況や感情をどれだけ減らせているか。
- 12~16の平均スコア=職場の人たちと良い人間関係を築くことができているか。
- 17~21の平均スコア=困難な仕事にも積極的に取り組むことができているか。
それぞれの平均スコアをみて、
- 自分がいまの仕事を好きになれないのは、何が足りないからなのか?
- やりがいをもっと高めるためには、何が必要なのか?
- 仕事がつまらないと感じるのは、何が原因なのか?
などと考えてみると効果的です。
ジョブクラフティング尺度:日本人平均スコア
ちなみに、日本人の平均スコアは5点満点中「2.20」となっています。
項目別でみると、自分の能力やスキルを高めるのはできてるけど、職場の人たちとうまく人間関係をつくるのはちょっと苦手…というような人が多い感じですね。
ジョブクラフティング尺度は、3、4ヶ月ごととか、新しい仕事をはじめたなどに定期的にすると、自分に何が足りてないのか、改善点が見えるのでおすすめです。
ぜひ定期的に診断してみてください。
ジョブクラフティングのやり方まとめ
今の仕事を好きに変える「ジョブクラフティング」のまとめです。
- ジョブクラフティングとは、「自分の仕事を価値観にもとづいてとらえ直すこと」をいう。
【ジョブクラフティングのやり方4ステップ】
- ステップ1:配分をスケッチする
- ステップ2:価値観をリストアップする
- ステップ3:価値観をあてはめる
- ステップ4:具体的な行動を決める
- 自分が立てたアクションプランの成果が出ているかは、「日本語版ジョブクラフティング尺度」確認できる。
- 日本人の平均スコアは5点満点中「2.20」
- 「日本語版ジョブクラフティング尺度」は、3~4か月に1回チェックするのがお勧め。
あとは、あなたがジョブクラフティングの図をもとにつくったアクション・プランを実行すればOKです。
実行すれば、あなたのやりがいは確実に変わっていきます。
今回紹介したジョブクラフティングをすれば、あなたの仕事に関する悩みのほとんどは解決します。
重要なのは、楽に仕事を終わらせようとか、新しい方法を考えようとするだけではなく、それらを超えるだけのモチベーションをどう上げていけるかです。
初めからやりがいをもっている人はいません。
自分なりの価値観にもとづいた行動をすることで、やりがいはつくれます。
ジョブクラフティングは正直手間がかかって面倒くさい部分はありますが、やってみると継続的にやりがいを感じることができるようになります。
ジョブクラフティングについてもっと深めたい方は鈴木裕の『4021の研究データが導き出す 科学的な適職』がお勧めです。
この記事でとりあげたステップ以外も解説されているので、より効果の高いジョブクラフティングができます。
もっと詳細を知りたい方は、実際に手にとって読んでみてください。
ジョブクラフティングのやり方に関するよくある質問
ジョブクラフティングの図って、異動とか転職しちゃったらまた1から作り直し?
最初にスケッチして作成した図は、また1から作り直すケースはあまりありません。
新しい業務がくっついてくるのですが、少し前回と似たような仕事が残るパターンがほとんどです。
そしてまた価値観をリストアップして、配分をスケッチした図にその価値観をあてはめていけば、仕事がかわってもずっとやりがいを感じることができます。
【参考文献・データ等】
- 鈴木裕『4021の研究データが導き出す 科学的な適職』
- 慶応義塾大学島津明人教授「日本語版ジョブクラフティング尺度」
- Cort W. Rudolph,Kristi N. Lavigne,Ian M. Katz,Hannes Zacher(2017)Job Crafting: A Meta-Analysis of Relationships with Individual Differences, Job Characteristics, and Work Outcomes.
- Luigi Brocca(2019)Job Crafting, Work Engagement & Job Satisfaction. Un modello di mediazione delle nuove sfide al lavoro.
- Meredith Myers et al.( 2019) Job CraftingTM Booklet.
- Hisashi Eguchi, et al (2016) Validation of the Japanese version of the job crafting scale.
【記事執筆】あすか
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