日本人の約9割は睡眠8時間取れてない


必要な睡眠時間は “平均8時間”

あなたは「24時間戦えますか」というフレーズをご存じですか?
1989年に流れた栄養ドリンクリゲインのCMで、一時期話題になったものです。
「24時間戦えますか」は平成元年の流行語大賞になっています。
当時の日本は、不眠不休で仕事をすることが一種の美徳のような時代でした。
しかし実際には、私たちは1日の労働時間が長くなればなるほど、パフォーマンスが落ち、かえって仕事の質が落ちることが分かっています。(参考:「労働時間の長さ」=「成果」ではない)
逆に言うと、このCMは睡眠を取ることが軽視されていた時代を反映しているといえます。
ただ、睡眠は悪いことと考える風潮は、どうやら今も残っているようです。
令和3年度の日本人の睡眠時間についてのデータをみると、

・「8時間以上~7時間未満」9.7%
・「7 時間以上~8 時間未満」15.9%
・「6 時間以上~7 時間未満」 34.7%
・「5 時間以上~6 時間未満」 23.9%
となっています。(厚生労働省「健康実態調査結果の報告」)
8時間以上寝ている人はたったの9.7%です。
アメリカの睡眠財団の研究では、18歳から64歳は7時間から9時間の睡眠をとるべきとされているので、大半の人は平均8時間の睡眠が必要といえます。(SLEEP FOUNDATION)

他の文献を見てみても、ロングスリーパーとショートスリーパーの割合は2割ですので、やはり約80%の人は平均8時間の睡眠が必要です。
仕事のパフォーマンスを上げるためにも、睡眠時間の確保は絶対的です。
そこで今回は、私たちの睡眠時間を十分に確保するための科学的な方法について、7つ紹介していきます。
睡眠時間を確保する方法
睡眠対策1:寝る前にブルーライトを見ない

寝る前にブルーライトを見てはいけないことは有名な対策であるため、既に知っている方はいるかもしれません。
端的に言うと、ブルーライトは、スマホやパソコンなどの画面から出されている青色光のことをいいます。
夜間にブルーライトを浴びると、昼と夜の区別ができなくなり、睡眠障害を起こす可能性が高くなります。(住総研)
また、健康的な成人男性を対象にした研究では、白熱電球よりもブルーライトを見た場合の方が睡眠の質が下がることが分かっています。(Sleep Medicine)
明日の自分が辛くならないために、ブルーライトを見ないための具体的な方法について2つ紹介します。
アラームを設定する

1つの目の方法はアラームの設定です。
例えばブルーライトを発するスマホやパソコンを使うのは夜9時までと決めたとします。
そこで夜9時にアラームが鳴るよう設定し、時間になったら電源をオフにします。
過重労働対策2「最終退社時間」の設定で紹介したように、人は時間を設定すると限られた時間で作業を終えようと一生懸命になるため、生産性が高くなります。
夜9時までと決めることで、睡眠の質を下げるブルーライトを浴びる時間を減らすだけでなく、作業の効率化にも繋げることができます。
できれば、寝る2時間前まではブルーライトを見ない方がいいですね。
20秒ルールを応用する

2つ目の方法は、20秒ルールの使用です。
20秒ルールは習慣化でよく使われる方法です。
簡単にいうと、20秒ルールは続けたい習慣は20秒早く、逆にやめたい習慣は20秒遅くなるようにするものです。
今回は寝る前にブルーライトを浴びる習慣をなくしたいので、20秒以上実行しにくくします。
ベッドで横になった後スマホを見る習慣がある人は、例えば夜10時にアラームがなった後、すぐにスマホの電源をオフにして棚の中に入れます。
スマホを見るためには、わざわざ棚の引き出しを開けてスマホを取り出し、電源を入れて完全に起動するまで待つ必要があります。

間に手間を入れるだけで、スマホを見る行為はぐんと減らせます。
20秒ルールを応用することで、夜間のブルーライトを徹底的に遮断し、ぐっすり眠れるようにしましょう。
睡眠対策2:寝る以外にベッドを使わない

1344名の男女を対象にしたアンケート調査では、全体の28.9%が寝付き(布団に入ってから眠るまでに要する時間)に、時間がかかったと回答しています。(厚生労働省「健康実態調査結果の報告」)
10人中約3人が、布団に入ってもなかなか寝付けずにいます。
これを解決するためには、睡眠の状態に入れるよう環境を設定する必要があります。
前回、集中力を上げる方法として、作業前に音楽を聴くことを紹介しました。
作業前に盛り上がる曲を固定して聴くことで、脳が「これは集中力を上げるための曲だ」と認識して、パフォーマンスを上げやすくするものです。
睡眠も同じです。
この場所は寝るための場所だと脳に覚えさせれば、睡眠の状態に入りやすくなります。(アリゾナ大学)
逆に言うと、ベッドで横になった後スマホでゲームをしたり漫画を読んだりすると、睡眠の質が下がります。
そのため、寝る以外にベッドを使わないことが大切です。
寝る以外にベッドを使わないことに加えて、更に睡眠の状態に入りやすくなる方法を2つ紹介します。
眠くなったときにベッドに入る

1つは眠くなったときにしか寝る環境をつくらないというものです。
中々寝付けない人は、眠ろうとしてベッドで横になります。
ただ、睡眠の状態に入りやすい状態を作るためには、本当に眠くなったときに初めて横になる必要があります。
「ベッドに入る→寝る」という状態を脳にインプットさせるためです。
眠れなかったらベッドから出る

2つ目は、布団に入っても眠れなかったらベッドに出るというものです。
10分、15分たっても眠れなかったら、読書や部屋の整理など他のことをします。
そして、再び眠気が出るまで待つというのを繰り返します。
上記を日々繰り返すと、布団に入ってから眠るまでの時間を短縮させることができます。
睡眠対策3:アロマを使う

睡眠対策3つ目は、アロマを使うです。
特にラベンダー、ベルガモット、カモミール、ローズなどは、心を落ち着かせるアロマです。
これらのアロマはストレスを軽減し、睡眠を改善させる効果があります。
アロマディフューザーを近くに置いて布団に入れば、アロマの効果で心穏やかな気持ちを感じながら、安心して眠りに入ることが可能です。
水を入れる作業や充電などが必要になりますが、それが終われば居心地の良い香りを嗅ぎながら、リラックスして眠ることができます。
【参考】(在庫がない場合もあり)
エキスを準備したり、水を入れたりする作業が少し面倒であれば、ラベンダーなどの香りを直接枕につけるタイプがおすすめです。
【参考】(在庫がない場合もあり)
アロマの香りが睡眠に与える効果は高く、特にいつも寝不足の人には必須のアイテムです。
あなたが寝る前に明日の仕事について考えたり、寝る前に色々過去の嫌な出来事を反芻(はんすう)したりして中々寝付けづに悩んでいるなら心強いパートナーになります。
ぜひ試してみてください。
睡眠対策4:寝る前に明日の予定を立てる(ブレインダンプ)

寝る前に明日やるべき仕事のことを考えてしまい、なかなか眠りにつけなくなった、という経験はありませんか?
2018年、アメリカのベイラー大学が行った研究では、寝る前に明日の予定を紙に書きだすと睡眠の質が上がり、眠りにつくまでの時間が平均9分早くなることがわかっています。(ベイラー大学)
明日やるべきことを紙に書きだす手法をブレインダンプといいます。
脳に残っている心配事を外に出すことで、メンタルを安定させることができます。
予定を立てる方法には、以前紹介したタイムボクシングなど細かにスケジュールを決めるものなど色々ありますが、ここでは手軽にできるIBDメソッドがお勧めです。
IBDメソッドとは、紙に明日やるべきことを優先順位の高い順に6つ立て、翌日その順にするというものです。
これは私たちのメンタルを安定させるだけではなく、生産性を高める方法の一つとしても有効です。
睡眠対策5:青系の服を着る

睡眠対策5つ目は「青系の服を着る」です。
あなたは、水族館に行くといつもより心が穏やかになった経験はありませんか?
青い光はリラックス効果が3倍になることが分かっています。
青色は、副交感神経から心をリラックスさせるセロトニンという物質を出させる効果を持っています。
また、青色は呼吸が深くなります。
そのため、青色の服を着て寝るとリラックスして眠りやすくなります。(参考:色彩心理学①)
睡眠対策6:喚気をする

デンマーク工科大学の研究で分かったものです。
換気は集中力を上げる方法でも紹介しましたが、換気は睡眠の質を上げる効果も持っています。
よく眠れる部屋というのは、二酸化炭素の濃度が低いところです。
眠る前に寝室の換気をするだけでも効果的です。
睡眠対策7:職場に近い家に引っ越す

最後7つ目の睡眠対策は「職場に近い家に引っ越す」です。
ブラウン大学の研究チームは、通勤時間が1分増えるごとに
・睡眠時間は0.2205分のペースで少なくなる
ことを推定しています。(ブラウン大学)
仮に単身赴任や実家から通っている人などの通勤時間が片道1時間であれば、
・片道1時間(60分)×2×0.2205分=26.46分
となり、毎日約30分の睡眠時間が削られてしまいます。
月計算だと約13.25時間、年間計算だと約160時間の睡眠時間が削られる計算です。
根本的に解決するためには、職場の近くに引っ越しするしかありません。
ただ現実的には引っ越しは厳しいため、情報通信業や学術研究業などはデスクワークの多い業種であればテレワークの導入がおすすめです。(参考:テレワークのメリット)
デスクワークがメインでなくても、全体の約40%がテレワークの活用経験があり、そのうちの約75%がテレワーク継続していると回答しています。

テレワークにすれば通勤の必要がなくなるため、1日約30分の睡眠時間を増やすことができます。
睡眠時間を確保できれば、パフォーマンスが上がり生産性も上がるため、通勤時間はできるだけ減らしていく方向性で考えていきましょう。
睡眠時間を確保する方法:まとめ

今回紹介した睡眠時間を確保する方法は、次のとおりです。
・①寝る前にブルーライトを見ない
・②寝る以外にベッドを使わない
・③アロマを使う
・④寝る前に明日の予定を立てる
・⑤青系の服を着る
・⑥喚気をする
・⑦職場に近い家に引っ越す
大事なことなので繰り返しますが、私たちの約9割が平均8時間以上の睡眠が必要です。
睡眠時間が短くなるほど、私たちの仕事のパフォーマンスは下がります。
ショートスリーパーでもない限り、8時間以上の睡眠確保は必須でしょう。
あなたが1日8時間以上の睡眠がとれるようになると、上位10%に入ることができます。
1日7時間以上の睡眠でも、上位15%です。
24時間戦う時代は終わりました。今はウルトラマンのように短い時間でしっかり仕事をこなす時代です。
明日の自分が辛くならないためにも、まずはあなたが取り組めそうな方法からスタートしてみることを強くおすすめします。
【参考文献・データ等】
・栄養ドリンクリゲインCM「24時間戦えますか」(1989年)
・厚生労働省「令和3年度 健康実態調査結果の報告」
・AUGUST 29, 2022 How Much Sleep Do We Really Need?
・住総研 研究論文集No.42,2015 年版「住宅照明中のブルーライトが体内時計と睡眠覚醒に与える影響」
・西野精治『スタンフォード式 最高の睡眠』
・メンタリストDaoGo『自分を操る超集中力』
・鈴木裕『4021の研究データが導き出す 科学的な適職』
・厚生労働省「労働経済の分析」
