意外と知らない?「1万時間の法則」よりも「もう1つの事実」の方が重要だった件
あなたは「1万時間の法則」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは、
- ある分野で一流として成功するためには、1万時間の量を練習する必要がある
というもので、マルコム・グラッドウェルが提唱した法則です。
この「1万時間の法則」は元となった研究があります。
それは心理学者K・アンダース・エリクソンがおこなった調査です。
この調査では、
- 「一流のバイオリニストは普通の生徒よりも練習時間が格段に多い」
という結論を出しています。(R)
この発見は、「生まれながらの天才を努力によって超えることができる」という新しい可能性を感じさせるものとして、よく書籍などでも取り上げられています。
ですが、「1万時間」という数にとらわれて、ただ時間だけかけて練習する人が出てきてしまい、質が無視されるという問題が生まれてしまいました。
「1万時間の法則」のもう1つの事実

「1万時間の法則」の元ネタとなったバイオリニストを対象にしたこの調査では、実はもう一つ明らかにになっている事実があります。
それは、
- 一流のバイオリニストは、平均的な人よりもよく眠っていた
という事実です。
エリクソンの調査によると、一流のバイオリニストは、
- 1日平均8時間36分の睡眠
- 1日平均24分の昼寝
をしていることがわかっています。
昼寝の時間も足すと、ちょうど1日平均9時間は眠っている計算です。
日本人の平均睡眠時間で最も多いのは
- 1日平均6 時間以上~7 時間未満(34.7%)(厚労省)
なので、なんと一流の人たちは平均的な日本人よりも2~3時間以上長く睡眠をとっています。
研究チームはこの事実から、睡眠が集中力を支える理由の一つであると結論を出しています。
一流のバイオリニストは、ただやみくもに練習するのではなく、睡眠によって練習時間の質を最大限に高めていたのです。
結果を出した人って寝る間も惜しんで練習に励んでいるイメージがありますが、実際には睡眠もたくさんとっていたんですね。
睡眠を取ると正答率2倍?

睡眠をとることの重要性については、ドイツのリューベック大学の研究でも明らかになっています。
研究チームは、8時間ゆっくり眠ったグループと、何度も睡眠の邪魔をされたグループに分け、そのあとで数字クイズを解かせて正答率を調べました。
すると、8時間ゆっくり眠ったグループは、何度も睡眠の邪魔をされたグループよりも正答率が高かったという結果が出ました。
その差はなんと2倍です!
理由について研究チームは、
- 十分な睡眠をとったことで脳が膨大な情報の整理ができ、いろんな解決策をみつけることができたためではないか
としています。
逆にいえば、睡眠の質が下がってしまったらパフォーマンスがいつもの半分くらいになってしまうということで、意識して睡眠はとるようにしたいですね。
睡眠がとれない人は昼寝しよう

以前「結局、私たちはどれだけ睡眠が必要なのか?」で、全体の8割くらいは最低でも1日7時間以上の睡眠が必要だという話をしました。
日本人の平均睡眠時間は世界の中でもっとも低く、
- 1日8時間以上とれてる人はたったの9.7%
- 最低ラインの7時間をとれてる人でも約30%
しかありません。(厚労省)
日本人の8割以上が1日8時間以上の睡眠が取れていない現代、十分な睡眠をとるのが難しいと感じる人は多いでしょう。
そこでお勧めなのが「昼寝」です。
アメリカ科学アカデミー紀要に掲載されたレポートによると、
- レム睡眠(深い睡眠)が一度でもあれば、脳はバラバラな情報を繋げることができる
としています。
昼寝をすることで、私たちの能力は引き出され、1時間あたりの生産性を高めて良い成果を出せるようにしてくれます。
グーグルでは専用の昼寝ボット付き

近年では昼の睡眠が生産性を高めるというので、昼寝を推奨する会社も増えているようです。
例えばあのグーグル本社では、社員が快適に昼寝できるように、昼寝用の専用ポッドまで用意されてます。
バッテリーが切れないように、人間も充電が必要だということですね。
もしあなたの会社内で休憩室などがあれば、軽く昼寝してみると午後の仕事もはかどるので、積極的にとるといいでしょう。
まとめ:睡眠をとるのも大事な仕事

大事なことなのでくり返しますが、パフォーマンスを上げるには睡眠は必須です。
私たち日本人は、「休むこと=悪」だという考え方が根強い文化をもっています。
寝る間も惜しんで働くことが美徳とされていた日本では、まだまだ睡眠は重要視されにくい要素かもしれません。
ですが、研究結果からもわかるように、私たちは睡眠に対する意識を根本から変えていく必要があります。
- 一流のバイオリニストは、平均的な人よりもよく眠っていた
「1万時間の法則」のもう一つの隠れた真実は、休むことも大事な仕事だということを私たちに教えてくれています。
- 「なんだか仕事に集中できないな…」
- 「作業が全然進まないな…」
と感じたときは、睡眠不足が原因かもしれません。
昼寝をしたり、睡眠をいまよりも30分多くとったりするだけでも改善するので、睡眠時間は必ず確保したほうがいいですね。
睡眠の取り方については以下の記事でまとめているので、まとまった睡眠がとれずに悩んでいる方はこちらをご覧頂ければと思います。
>>参考:【パフォーマンス向上】ぐっすり快眠するための方法を14個まとめてみた
【参考文献・データ等】
- K. Anders Ericsson, Ralf Th. Krampe, and Clemens Tesch-Romer(1993)”The Role of Deliberate Practice in the Acquisition of Expert Performance.” Psychological Review 100(3):363-406.DOI:10.1037//0033-295X.100.3.363.
- 厚生労働省「令和3年度 健康実態調査結果の報告」
- グレッグ・マキューン『エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする』
【記事執筆】あすか
【Twitter】:https://twitter.com/askalabo